背景にあの巨匠も? 『タイガーセブン』『風雲ライオン丸』はなぜ特撮のお約束を破ったのか
変身ヒーローの「型」にケンカを売った脚本家?
『風雲ライオン丸』と『鉄人タイガーセブン』といえば、「『戦いになるといつも逃げている』と仲間から非難される」「悪との戦いのなかで子供が巻き添えになる」「主人公が戦いに嫌気がさして逃亡」など、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』といった変身ヒーローものの暗黙のルール、「お約束」から外れた作品です。 【画像】え…っ? 大物!こちらが「お約束」を破った『風雲ライオン丸』『鉄人タイガーセブン』にも影響を与えた巨匠です(3枚) その2作のメインライターを務めたのは高際和雄さんで、彼の師匠は『北の国から』『前略おふくろ様』などを手がけた、巨匠脚本家の倉本聰さんでした。『風雲ライオン丸』や『タイガーセブン』のやりきれない展開は、リアルな作風で知られる倉本さんの大きな影響があったようです。 倉本さんの作風は『北の国から』に代表されるように、決して予定調和に流されず、ときにはキャラクターが苦い挫折を味わい、まるで登場人物が実在しているかのようなリアリティがあります。多くの視聴者の胸に刺さる名作ドラマが生まれたのは、ご存じの通りです。 高際さんは、倉本さんの口述筆記を担当し、彼の作劇術をごく間近で見ていました。その倉本さんの影響を受けたであろう高際さんは、その手法を特撮ヒーローものに持ち込んだのでしょう。 書籍「快傑/風雲ライオン丸 ピー・プロ70’sヒーロー列伝2」の高際さんのインタビューによると、彼は子供の頃から街頭テレビの力道山のプロレス生中継で、「放送時間内」に空手チョップで勝負が決まることに疑問に思っていたそうで、それが従来通りではないヒーローの描き方につながったようです。さらに特撮ドラマの「お約束」で触れられない部分を描いた理由に関しても、以下のようにコメントしています。 「意識的に『裏っ側』を引っ張り出そうっていうのがあったんですよ。『なんで約束事で全部チャラにしちゃってんだ?』っていうのがありました。変身ものの『約束事』みたいなものがあるじゃないですか? 『どうして触れないんだろう?』と」 高際さんの考えに共鳴したのが、『風雲ライオン丸』『鉄人タイガーセブン』のメイン監督だった大塚完爾さんで、「僕の回はあの方がよく書いてくれました。すごく人間ドラマっぽい作品が多かったですね。僕としては子供向け、大人向けという区別はなくて、ドラマを見せるということでは同じなんですよ」(同インタビューより)と語っています。