「愛猫のハイジからはお世話をする“ばあや”と思われています」『マザー』を刊行した乃南アサが明かす“猫との日常”
「ああ、いま私は書きたいのだな」
──登場人物が「生きている」からこそ、乃南さんのキャラクターは長く愛され続けるのですね。プロットも作成せず、登場人物にまかせて物語を生み出し続けるその原動力はどこから湧き出てくるのか、教えてください。 私も知りたいです(笑)。いま、空っぽなんですよ。このまま空っぽのまま何年も経ってしまうかもしれませんし、そう思いながらも何かがポッと生まれるかもしれない。それは私自身にもわかりません。 「小説を書かなくてはいけない」と思ったこともありませんが、それでもこれまで続けてきたということは、やはり書くのが好きだからということに尽きると思います。書きたくなると自然と体が書斎に向かうので、最近は自分が書斎に行きたくなると、「ああ、いま私は書きたいのだな」と気づけるようにはなりました。 ──ご執筆は必ず書斎でされるのですか? はい。私はデスクトップパソコンを使っているので、書くときは必ず書斎に行きます。ノートブックパソコンは微妙にキーボードのサイズが指に合わず、画面との距離感もいまひとつなので、もっぱらデスクトップ派です。 ──執筆時間は決めておられますか? それも決めていません。書きたければ書く。それだけです。 といっても、暗くなるとビールを飲みたくなってしまうので(笑)、明るいうちに書くことが多いですね。ですから、なるべく打ち合わせなど外に出ていく仕事は夕方以降にさせていただき、昼間の時間は執筆にあてるようにしています。 ただ、これもご近所からあらぬ誤解を招く一因になっているかもしれません。「あの人、また夕方からおしゃれして出かけたわ」などと言われているかもしれないなと、いま思いました。実態は「ばあや」ですけど(笑)。 ──「ばあや」? 私、猫を飼っているのですが、飼い猫からは完全にご飯のお世話をしてくれる「ばあや」だと思われているのです。 愛猫のハイジは寒がりでエアコンが苦手なので、いつもエアコンのついていない部屋で過ごしています。だいたい昼間は寝室のベッドの上で優雅に過ごしていることが多いのですが、夜になって、私が寝室に行ってエアコンをつけると、渋々という感じでスペースを譲ってくれて。それが本当に「私のベッドだけど、あなたに貸してあげるわ」という態度なんです。でも、ゲリラ雷雨のときは怖がって私にしがみついてくるかわいいところもあるので憎めません。これからも仲良く暮らしていこうと思っています。
相澤洋美