遊びを通じて社会課題の解決を図る 「遊びのスペシャリスト」 阿蘇品真美さん まちかど人間録
「出た絵を使って即興でお話を作ってください。どんな内容でもいいですよ」 絵柄のついたサイコロを3つ同時に投げて、ニコニコしながら結果を見守る阿蘇品真美さん(39)=大阪市=は、遊びを通じたコミュニケーションで社会課題の解決を図る〝遊びのスペシャリスト〟だ。 遊び体験は子供だけでなく、大人も対象としているが、「おもちゃを持っているだけで〝子供関係の仕事の人だな〟と思われています」と笑う。 人と関わることやおしゃべりが大好きという。「実家が酒屋なので、両親とお客さんのやり取りを見聞きしているうちに自然とそうなりました。知らない人には特に興味がわきます」 短大卒業後は、コミュニケーション能力が生かせる保育士となり、やりがいも感じていた。だが、「子供ができたら子育てに専念したい」として7年後に退職。その後、長女を妊娠・出産した。 しかし、もとよりじっとしていられない性分。子供と一緒にいられる仕事を探したがみつからない。「本当にしたいこと」を考え始めた。そして幼少期から、人間関係や社会適応能力を遊びの中で養ってきたことを思い出し、「遊び」を仕事のテーマに決め、出産後間もない平成26年からフリーランスの活動を始めた。 大阪府内を中心に「遊びの教室」などを開き、おもちゃの遊び方を伝えるほか、集団ゲームで心がふれ合う体験や楽しさを提供。これまでに接した親子は7千組以上にのぼるという。 そのうち、正解がない遊びの空間では誰もが寛容になり、普段よりも意思表示がしやすいことにも気づいた。「人間関係の構築や価値観の違いを知る機会として、大人にも遊びを応用できるのでは」と感じるようになったという。 そこで今、力を入れようとしているのが企業や行政での人材研修だ。 オリジナルゲームを用意し、たとえばテーマ別に分かれてそれぞれの立場で意見を出し合う。人の意見を否定せず、誰かが助け舟を出したり、役割分担をしたり、そういうことを疑似体験して日常生活や仕事に生かしてもらうのが狙いだ。 過去の研修では、参加者からカミングアウトがあったり、身の上話が出たりすることもあり、「遊びという余白の空間だからこそ心が開放されるのではないか」と話し、手応えを感じている。