日本フィルが新プロジェクト、広上淳一指揮「オペラの旅」開始へ 「仮面舞踏会」来春上演
広上は89年、シドニー・オペラで「仮面舞踏会」を指揮、これが初めてのオペラだった。昨年は宮崎国際音楽祭でも取り上げ、日本フィルの定期演奏会ではレオンカヴァッロの「道化師」を指揮した。
「『道化師』を振りながら、日本フィルの息吹の強さ、音楽のたくましさを感じました。サントリーホールはオペラハウスではありません。セミ・ステージ形式になりますが、衣装もつけます。気軽な気持ちで、すぐれた歌手のオペラを楽しんでもらいたい。日本フィルはオペラでも注目されるオーケストラになります」と話す。
「仮面舞踏会」は1859年に初演された。スウェーデンのグスタフ3世が仮面舞踏会で暗殺された事件を題材にしたが、検閲のため場所をボストンに変えた。ボストン総督リッカルドの、忠実な秘書レナートの妻アメーリアへの道ならぬ恋と暗殺の悲劇が描かれる。
演出の高島勲は「歴史的な衣装でやることには疑問を持っているので、今検討しています。背後にある人間のさがをテーマにした演出が多い。『赦し』が大きなテーマではないかと思います。そこに至る人間の運命を描きます。暗殺によって政治を動かすことは世界的に起きています。自分たちにも身近なテーマです」と話した。
ヒロイン、アメーリアを歌うのは中村恵理。中村はドイツのバイエルン国立歌劇場の専属歌手を務め、英国ロイヤル・オペラで「トゥーランドット」のリュー、「蝶々夫人」の蝶々さんを歌うなど世界的に活躍している。
「アメーリアはヒロインですが、脇役なのです。アメーリアはリッカルドを思っています。個人的な悩みが政治につながっていくドラマ性が高いオペラです。音楽的にも悩みをともにできる作品です」。またリッカルドの宮里直樹は「涙なくして見られないオペラです」と話した。
公演は2025年4月26、27両日。他に池内響(レナート)、福原寿美枝(ウルリカ)、盛田麻央(オスカル)、高橋宏典(シルヴァーノ)ら。振付は広崎うらん、合唱は東京音楽大。問い合わせは日本フィル(03・5378・5911)。(江原和雄)