ホンダ新型「ヴェゼル」弟分の「WR-V」とは何が違う? 正常進化した“独自のハイブリッド”は静かで快適なのに走りが楽しい
同じコンパクトSUVでも目指す方向性が異なる「ヴェゼル」と「WR-V」
マイナーチェンジを受けた新型「ヴェゼル」に試乗しました。 【画像】「えっ!…」弟分には負けない! これが全方位的に進化したホンダ新型「ヴェゼル」です(46枚)
現行型「ヴェゼル」が誕生したのは2021年4月のこと。それから3年、ホンダが展開するSUVは「ヴェゼル」の一本足打法から脱却し、2023年4月にデビューした「ZR-V」2024年3月に発売された「WR-V」を加えた、多彩なラインナップとなりました。 というわけで本記事では、今年2024年に登場した新型「ヴェゼル」と「WR-V」の違いについて、チェックしたいと思います。 新型「ヴェゼル」は、ハイブリッドシステムの進化や静粛性の向上、先進安全性の進化、4WDの進化など、多彩な改良を受けています。 そんな新型に接してみて改めて感じたのは、ホンダが同じく2024年に発売したコンパクトSUV「WR-V」との違いです。 デビューしたばかりのブランニューモデル「WR-V」は、「ヴェゼル」とほぼ同じサイズで、基本的なプラットフォームも「ヴェゼル」と共有するコンパクトSUVです。 しかし、「ヴェゼル」と「WR-V」はいろんな点が異なります。最も分かりやすいのは、見た目の違いでしょう。 流麗で都会的な「ヴェゼル」に対し、「WR-V」は力強い印象の直線的なデザインを採用。方向性が全く異なります。 そして2台は、パッケージングと価格帯、そしてバリエーションも明確に異なります。 まずパッケージングですが、「ヴェゼル」は実用性をしっかり保ちつつも、荷室の広さなどはデザイン優先で、多少ながら犠牲になっているのは否めません。 それに対し、「WR-V」は四角いフォルムのメリットを生かし、リアシートやラゲッジスペースの空間を最大限確保しています。それは、ボディサイズに見合わないほどの広さであり、いずれもクラストップの空間となっています。 価格帯は、「ヴェゼル」がボトムで260万円(消費税込、以下同)を超え、上は380万円弱に達するのに対して、「WR-V」は210万円から250万円ほど。明確な上下関係が存在します。 そしてバリエーションは、ハイブリッドや4WDの設定がなく、ガソリンの前輪駆動車しか存在しない「WR-V」に対し、「ヴェゼル」はガソリン車の4WD、ハイブリッドの前輪駆動車と4WDといった具合に、選択肢が多彩です。 装備レベルも「ヴェゼル」の方が格上。例えば、電動パーキングブレーキは「WR-V」には非採用。しかし、新しい「ヴェゼル」は全グレードに採用されています。 このように、「WR-V」には価格という明確なアドバンテージがあり、パッケージングも優れています。一方で「ヴェゼル」は、パワートレインの選択肢が多いだけでなく、インパネ回りを始めとするインテリアのつくり込みが上質です。 その上、ガソリン車どうしを比べると、乗員に伝わってくるエンジン音のボリュームが、「ヴェゼル」の方が小さいのに驚きます。 「ヴェゼル」は今回のマイナーチェンジで静粛性能を一段と高めており、その結果、「WR-V」の方が、エンジン音が大きく感じます。乗り比べると、「ヴェゼル」はノイズの発生源であるエンジンが、遠くに存在しているように感じます。 このように、「ヴェゼル」は、「WR-V」よりも上質なコンパクトSUVであり、価格差に見合うだけの違いが明白に存在しています。つまり「ヴェゼル」と「WR-V」は、同じコンパクトSUVでも目指す方向性が異なるのです。 ともにコンパクトSUVというカテゴリーに属しながら、方向性が明確に異なる2モデルをラインナップしてきたホンダに感謝したい……進化した「ヴェゼル」をドライブしながら、そんなことを強く思いました。
工藤貴宏