【ラグビー】流経大は開幕節黒星も「準備不足だったとは思いません」。
あくまで、試合当日に力を発揮できなかったことが敗因なのだ。流経大ラグビー部の池英基監督は言う。 9月8日、加盟する関東大学リーグ戦1部の初戦を落とした。前年度の順位で5つ下回る7位の立正大へ敵地で挑み、27-31で負けた。相手の繰り出す多彩なキックの処理、連続攻撃中のパスワークにエラーを連ねた。 ヘッドコーチから昇格2年目の韓国人指導者は、潔かった。 「自分たちの目指すダイナミックラグビーをするチャンスがあったのに、それができなかったのが敗因です。自分たちの準備してきたことが全部、出し切れなかった。いい場面でもチャンスを作れませんでした。初戦ということで、ばたばたでしていたのかなと」 LOで先発したシンクル蓮も続ける。 「いい流れを何回も掴みかけていたのですけど…。(直近の練習試合で黒星を重ねるなどして)勝ち癖がついていない部分、踏ん張るべきところで踏ん張れないところというちょっとしたひずみが重なって、こういう結果になってしまいました。不要なミスが多く、実力を出し切れていなかった」 8月に試練を迎えた。 主力組の校内合宿や控え組の韓国合宿が終わり、長野の菅平高原でのキャンプが始まるまでの間、2年生WTBのアポロサ・デレナラギがトラブルを起こしたと報じられた。 池は就任以来、規律を重視してきた。 走り込みのテストで目標数値に達していなかったり、授業に出席していないのが明らかになったりした選手は例外なくメンバーから外すと宣言。自覚のあるリーダーたちへも、「『この選手は許してください』はなし。心配な選手がいたら仲間同士で管理しなさい」と伝えていた。 本来はタフなクラブ文化を醸成して日本一を目指していただけに、かえって報道内容が愛好家へ与えるインパクトは強まったか。予定通りに実施された菅平キャンプの間、指揮官は合宿先とキャンパスのある茨城県龍ケ崎市を何度も行き来した。 シンクルは今度の件を、菅平入りに先んじで首脳陣から聞いた。現地に着いてから部員に知らせるつもりでいたが、その前にニュースサイトが情報を広げた。心の揺れる部員を束ねなくてはならなかった。 何より自責の念にかられた。問題が発生する前夜、デレナラギが出かける時に明確な一声をかけられなかったと悔やんだ。バイリンガルとあり、チームからは海外出身者へのサポートを期待されていたのだ。 現在、クラブ側は「事実関係を確認中」と強調する。諸々の事後対応や処分は、大学側へ委ねた。確かなのは、デレナラギが一時立ち寄った警察署を離れてもなおチームに合流していないことだ。本人は寮と別な場所にいる。 立正大戦後、池監督は気丈に振る舞った。一連の出来事と初戦黒星の関係性に、自分のほうから触れることはない。 「どんな状況でも監督として学生を勝たせる思いでやってきましたが、きょう勝って笑顔にできなかったのは私の責任。申し訳ないと思っています。いまはシーズン中。ここ(目の前の戦い)に、集中する。とにかく、大学の指示が出るのを待っている状態です」 今季の4年生は12名。例年より少ない。池監督は初戦を「経験の少ない学生が多かったので、(当初から)厳しい試合になるだろうとは思っていた」とし、2戦目以降をこう展望した。 「自分たちができることをやる。(部員のメンタリティーが)100パーセント固まったとは言い切れないのかもしれないですけど、とにかく負けは負け。選手もスタッフもこの結果を受け入れ、次に進みたいです」 学生生活最後の夏にタフな道のりを歩んだシンクルは、「(初戦では)流れに乗った時に何をすべきかの意思統一ができていなかった」と反省点を抽出する。 「春、夏と厳しいこと(トレーニング)もしてきたし、準備不足だったとは思いません。監督からは『そこ(デレナラギの件)は大学の判断(次第)。自分たちは自分たちのやれることをやろう』と言われています。きょう(立正大戦)では、やろうとしたことをやりきれなかっただけでした。アポがいたから(勝敗が)変わったという問題でもないと思います。(混乱は)ないです。去年からユニフォームが大学のカラー(赤)になって、自分たちは大学を背負ってやっている。大学の判断通りに、やることをやるだけです」 雑念を振り払いたい。21日、岩手・ウエスタンデジタルスタジアム北上で関東学大(昨季2部1位)とぶつかる。 (文:向 風見也)