兵庫県斎藤知事に県議会の全会派が「辞職申し入れ」… “不信任の議決”を避けたい「議員たちの思惑」とは?
知事が「辞職しなかった場合」の“2つのシナリオ”
議会側の申し入れに従って知事が辞職すれば、新しい知事を選ぶことになる。あるいは、議会が9月19日開会の定例会で不信任の議決を行い、知事がそれに従って失職する場合も同様である。 では、知事があくまでも辞職を拒んで続投しようとした場合、どのような展開が考えられるか。シナリオは2パターンに分かれる。 第一のパターンは、議会が不信任の議決を行い、それに対し、知事が議会を解散した場合である。 選挙の結果、知事に反対する議員が過半数を占めた場合、議会は再度の不信任の決議を行うことが考えられる。再度の議決については決議要件が緩和されており、出席数の2分の1で成立する。この場合、知事は失職することになっている(地方自治法178条2項・3項後段参照)。 問題は第二のパターン、つまり、議会が知事に対し「辞職の申し入れ」ないしは「辞職勧告決議」を行うにとどめ、不信任案の議決を行わなかった場合である。 三葛弁護士:「その場合、知事は『レームダック』と化し、県政の運営はきわめて困難かつ不安定になることが想定されます。 たとえば、予算案を通すには、議員の過半数の賛成を得なければなりません(地方自治法211条、116条)。 知事が独自の政策を実現しようとしても、その政策的経費が認められる可能性は極めて低く、ほぼ絶望的かもしれません。 市議会議員を務めた経験から、肌感覚として、議会が不信任案決議をしようと思えば可能な状態、つまり議会で首長の味方をしてくれる(少なくとも不信任案に反対する)議員が4分の1より少ないというのは、首長にとって相当に切羽詰まって苦しい状態です。 ましてや、現状、知事は与党と目される会派も含め、すべての会派から辞職を要求されています。 それでも知事が留任しようとすると、県政の著しい停滞を招くのは避けられないでしょう。改めて県議会が不信任の議決へと動く可能性があります。 そして、事実上は、『死に体』となった知事に対し、『猫の首に鈴を付けるのが誰か』、つまり誰が引導を渡すのか、ということが注目ポイントとなります。 また、住民からの解職請求(リコール)の動きが出てくる可能性も考えられます。」 斎藤知事は、想定されるこれらのシナリオを前提として、県議会定例会初日の9月19日までに自身の進退について最終的にどのような判断を行うのか。注目される。
弁護士JP編集部