公費解体、気付けば更地 輪島で2件 業者連絡ミス、家財も処分
●所有者「再建できない」 能登半島地震で損壊した建物の公費解体を巡り、解体業者が建物の所有者に無断で取り壊しを始めたケースが輪島市内で3件確認されたことが17日、市への取材で分かった。このうち2件は所有者が工事に気付いた時点で既に解体が終わり、更地にされていた。がれきと一緒に商売道具などの家財を処分された人もおり、「なりわいを再建できない」との嘆きが聞かれる。市は解体工事前に所有者への連絡を徹底するよう業者に強く求めている。 無断で解体が行われた3件は7月下旬から8月上旬に確認され、所有者からの連絡などで判明した。更地にされたのが2件で、残る1件は工事中に所有者が気付きストップをかけた。3件はいずれも県外の解体業者による連絡ミスだった。 地震前まで輪島市河井町で印鑑の製造販売を手掛け、現在は応急仮設住宅で暮らす本郷明夫さん(69)は7月下旬、木造2階建ての店舗兼自宅が突然、更地になって言葉を失った。 地震で建物は全壊判定を受けた。6月に解体業者とコンサルタント業者と打ち合わせ、工事が始まる前に連絡を入れるよう依頼したが、知らないうちに工事が始まっていたという。 約40年の歴史があった店舗には印鑑を製造するための道具や材料、顧客データが入ったパソコンなどが残されていた。解体に合わせて取り出す考えだったが、がれきとともに処分場に搬出され、「気付いた時は手遅れだった」と肩を落とす。 ●同じ名字で「未遂」 このほか、解体予定の建物とは別の建物が取り壊されそうになったケースもあった。建物と建物が近い距離にあり、所有者の名字が同じだったことが原因で、この時は解体に取り掛かるタイミングで業者が間違いに気付いたという。 先月の奥能登豪雨で解体作業は一時中断したが、今月に入り市内で活動する解体班は約260班となり、豪雨前より増えた。市は建物の取り壊し前に所有者に了解を得ることや家財の取り出し希望を確認することを徹底するよう業者に促している。