2024年3月上場の「IPO株」15銘柄の投資判断を紹介!全世界の企業にIoTの基盤を提供する「ソラコム」や、観光業界の人手不足で需要が増加する「ダイブ」に注目
2024年3月に新規上場した「IPO株」15銘柄のうち、アナリストが「強気」と評価した「ソラコム」と「ダイブ」に注目! 【図版】2024年3月上場の注目のIPO株 ●2024年3月に新規上場した「IPO株」は全部で15銘柄! 日本株への追い風が波及し、IPO株の取引も活発に! 3月は15社が新規上場と活況だった。公開価格に対する初値の騰落率平均はプラス64%で、公開価格割れは1社のみ。ジンジブ(142A)やイシン(143A)、情報戦略テクノロジー(155A)は2倍を超える初値を付けた。 それ以上に目を引いたのが、大型IPOの好調ぶりだ。公募・売出規模447億円のトライアルホールディングス(141A)は公開価格比でプラス30%、108億円のソラコム(147A)はプラス80%の初値となり、その後の株価も大きく上昇する場面があった。 大型IPOは市場流通株が多くなり、株式需給をめぐる懸念が台頭しやすい。つまり、売り出す株が多いために上値は重くなりがちだ。だが、日本株に対する関心が高まるなかで、国内外の機関投資家が積極的に取引に参加しているとみられる。 「公募・売出規模66億円と、やや大きめだったマテリアルグループ(156A)は公開価格割れスタートとなりましたが、より大型の銘柄であるほど、追い風を受けやすい印象です。これは、規模が大きく流動性の高い銘柄のほうが、機関投資家が買いやすいためです」(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチの小林大純さん) IPOの環境は明らかに好転したといえる。4月上旬時点で東証グロース市場250指数はいまひとつの推移だが、市場の資金は既存の新興株に流れず、IPO株へ向かっているようだ。ブックビルディング参加の魅力が一段と増すとともに、話題となっている東京メトロをはじめ、今後も大型IPO株の登場が期待できるだろう。 ただし、足元では「値動きが非常に荒い点は要注意」と小林さんは指摘する。機関投資家はある程度長い目線での買いとなるが、短期売買の個人投資家もやはり多い。 「注目銘柄は、成長ポテンシャルが株価に織り込まれるのも早い状況です。株価が上がっているからと飛びつくと、その後に急落しかねません。上場後に買うセカンダリー投資の場合、次の期まで含めた業績の推移を予測しながら、株価の上昇余地を見極める必要があります」(小林さん) 成長期待の高い銘柄でも、株価が調整して過熱感が収まるまで待つのが得策。逆に成長性のわりに注目度が低く、足元の株価が下落している銘柄は狙い目だ。 ●2024年3月に上場した【IPO株】15銘柄! 上場日 公開価格 初値 (騰落率) 株価 (4/5) PER (PBR) 今後1年の 高値予想 (安値予想) 投資判断 21日 ◆STG(5858・東G) 1920円 3215円 (+67.4%) 2126円 10.7倍 (1.54倍) 3300円 (1900円) 強気 【分析コメント】東京プロマーケットからくら替え。マグネシウムを中心とした金属部品で、自動車の軽量化ニーズをとらえる。設備トラブルの影響も解消し、利益拡大に期待。 21日 ◆トライアルホールディングス(141A・東G) 1700円 2215円 (+30.3%) 2490円 27.4倍 (4.13倍) 3300円 (2300円) 中立 【分析コメント】九州地盤でディスカウントストアを運営。リテールテック(小売業へのITの導入)も手掛け、スマートショッピングカートは注目度大。株価は期待相応に上昇、狙うなら押し目待ちで。 22日 ◆ジンジブ(142A・東G) 1750円 3980円 (+127.4%) 2863円 23.7倍 (30.06倍) 3400円 (2300円) 中立 【分析コメント】高校新卒者に特化した企業の採用支援が主力。高卒向けで不可欠な学校との太いパイプを持つ。支店網の拡大で業績は急伸中だが、初値が高騰して過熱感がある。 25日 ◆イシン(143A・東G) 1080円 2234円 (+106.9%) 1539円 22.5倍 (4.25倍) 2100円 (1100円) 中立 【分析コメント】企業の自治体向けマーケティング支援を成長領域に位置付け、拡大する自治体DX市場の需要を取り込む。成長投資をこなして利益を大きく伸ばせるか注視したい。 26日 ◆L is B(145A・東G) 1188円 1553円 (+30.7%) 1030円 48.2倍 (8.02倍) 1500円 (900円) 中立 【分析コメント】ビジネスチャットを中心とした現場DXサービス。人手不足の建設業大手で導入実績が豊富。広告宣伝費の一巡もあり利益拡大に期待。ただ、株価は割安感がない。 26日 ◆ハッチ・ワーク(148A・東G) 2160円 2815円 (+30.3%) 2020円 14.0倍 (14.63倍) 2800円 (1800円) 中立 【分析コメント】月極駐車場の検索サイトや管理支援クラウドと、貸会議室サービス。コロナ禍から回復し成長軌道に復帰。初値後の株価は下落が続き、落ち着きどころを探る展開に。 26日 ◆JSH(150A・東G) 456円 893円 (+95.8%) 568円 26.8倍 (2.18倍) 650円 (420円) 弱気 【分析コメント】障がい者の農園での就労支援と訪問看護が2本柱。法定雇用率の引き上げ、精神科患者の増加で需要拡大。業績堅調だが、初値高騰で類似企業と比べ割高感が残る 26日 ◆ソラコム(147A・東G) 870円 1563円 (+79.7%) 1730円 172.0倍 (17.32倍) 2800円 (1600円) 強気 【分析コメント】企業向けにIoTのデバイス、通信回線、クラウドなどを提供。KDDI傘下を経て上場。 上場日 公開価格 初値 (騰落率) 株価 (4/5) PER (PBR) 今後1年の 高値予想 (安値予想) 投資判断 27日 ◆ダイブ(151A・東G) 1820円 3225円 (+77.2%) 3035円 26.1倍 (6.65倍) 4800円 (2600円) 強気 【分析コメント】リゾートバイト紹介などの人材サービスが主力。人手不足で需要は増加している。観光開発にも注力し、売上高が急拡大中。 27日 ◆コロンビア・ワークス(146A・東S) 3300円 3745円 (+13.5%) 3995円 7.4倍 (1.87倍) 5000円 (3600円) 強気 【分析コメント】賃貸マンションなど投資家やファンド向け不動産の開発・販売が主力。多様なスキームで収益を最大化する。コスト高の影響はあるが、事業拡大の期待が高い。 27日 ◆シンカ(149A・東G) 1320円 1671円 (+26.6%) 1201円 28.5倍 (9.70倍) 1900円 (900円) 強気 【分析コメント】固定電話も含むさまざまなチャネルの顧客対応を自動記録・一元管理できるクラウドサービス。直販・協業・OEMで広く展開。市場開拓の余地は大きい。 28日 ◆カウリス(153A・東G) 1530円 2875円 (+87.9%) 3690円 72.5倍 (49.80倍) 4000円 (2000円) 中立 【分析コメント】不正利用者情報のデータベースを作り、金融機関にマネーロンダリング検知サービスを提供。オンライン決済の普及が導入を促進。成長期待に相応の高PER。 28日 ◆情報戦略テクノロジー(155A・東G) 460円 1021円 (+122.0%) 722円 25.2倍 (10.10倍) 900円 (550円) 中立 【分析コメント】大手企業のDX内製を支援。顧客との協働でシステム開発し、柔軟な対応や継続的な改善を可能に。自社エンジニアとパートナーの拡大で成長加速できるか注視。 29日 ◆マテリアルグループ(156A・東G) 1180円 1085円 (-8.1%) 1016円 13.4倍 (6.45倍) 1300円 (900円) 中立 【分析コメント】PRコンサルを軸にデジタルマーケティングも。M&Aも活用し、対応領域と事業規模を拡大。業績成長率は高いが、株式需給への懸念や類似企業の株価低調がネック。 29日 ◆グリーンモンスター(157A・東G) 980円 1700円 (+73.5%) 1118円 16.7倍 (4.81倍) 1500円 (950円) 中立 【分析コメント】体験型の投資学習アプリ。広告からの口座開設で成功報酬を得る。LINE証券の事業再編の影響を受けたが、新NISAの追い風に期待。初値上昇で割安感は後退。 ※データは2024年4月5日時点。 ●3月のIPO株の中で、アナリストおすすめの2銘柄を紹介! ”強気”診断の「ソラコム」と「ダイブ」に注目! ここからは、3月のIPO株の中で、小林さんが特に注目する2銘柄を深掘りしていこう。 最初に紹介するのは、3月26日に上場したソラコム(147A)だ。 ソラコムは上場前から注目を集めたグローバル企業で、企業向けにIoTのデバイス、通信回線、クラウドなどを提供。KDDI傘下を経て上場。継続収益は7割超、海外売上比率は3割超に上り、グローバルな活躍と安定高成長が期待できそう。やや荒い値動きだが、押し目買いで臨みたい。 続いて紹介するのは、3月27日に上場したダイブ(151A)だ。 ダイブはリゾートバイト紹介などの人材サービスが主力。人手不足で需要は増加している。観光開発にも注力し、売上高が急拡大中。先行投資の段階だが、成功すれば利幅が大きく、今後の利益貢献に期待。高PERも成長領域と見れば許容範囲だ。
ザイ編集部
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