年2回開催、会場探しも大難航…『ブギウギ』笠置シヅ子が出ていた頃の『紅白』はどんな感じだったのか
『NHK紅白歌合戦』…「大みそか」開催の裏事情
今年も大みそかの風物誌『紅白歌合戦』の季節がやってきた。74回目。’23年は「テレビ放送70年」の節目の年。昭和28(1953)年2月1日に放送が開始されたが、テレビから生まれた時代の名曲を紹介する企画が黒柳徹子をゲストに放送される。 【デカ過ぎる…】進化・拡大化した小林幸子の「衣装」と痛恨のトラブル 実はテレビ開始のこの年は、年に2度『紅白』が行われた年。昭和28年に第3回と第4回、2回『紅白』が開催されているのだ。どういうことだ?実は『紅白歌合戦』は第3回まではお正月の特別番組だったのである。 しかし3年も続くと人気が上がって、翌年からそれまでのNHKの内幸町にあったスタジオから出て、観客を入れての公開放送を決めたのだ。 当然第4回は昭和29年お正月に行うことになっていた。まだNHKの自前の会館はなかった。そこで外の劇場を片っ端から当たったが、どこの劇場も貸してくれない。 劇場は正月公演のまっ只中だったのだ。貸してくれないというより、空いていなかったわけだ。 ちょうどNHKのラジオドラマで全国的に流行していた『君の名は』の作家、菊田一夫の骨折りで、『君の名は』の舞台、数寄屋橋にある日本劇場が何とか承諾してくれた。ところがやはりお正月は空いていない。しかし大みそかなら…という話になったのだ。 だが当時の大みそかはおごそかに家族みんなで過ごすもの。今のように年越しライブやカウントダウンなどはなかったから、「人気歌手を集め大きな劇場を借りたはいいが、果たしてお客さんが集まるのだろうか?」という心配が起こった。さらに運悪く当日の東京は雪模様だったという。 ところが開場少し前になると長蛇の列ができ、日劇は満員の客でごった返した。 ◆お正月とおおみそか…昭和28年、2回『紅白』に出演した笠置シヅ子 この昭和28年のお正月、大みそかともに出演しているのが笠置シヅ子(当時:シズ子)である。現在のNHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の主人公、福来鈴子のモデルである。 彼女が舞台せましと踊って歌う『東京ブギウギ』は暗い戦後の巷に響き渡った。それまで軍歌一色だった日本の新しい訪れを象徴するかのようだった。 当時、駐留していた米兵たちは笠置のステージを見て、「ほんとうにあれが敗戦国民なのか」と目を白黒させた。庶民は、まるで鬱積した何かを吐き出すかのように、笠置のがなり立てるような歌声に勇気と希望を見た。