「力による平和」尹・トランプのシンクロ率は高いが…ターゲットは全く違う(2)
◇北朝鮮の核・人権に「強硬発言」多数 ただし、トランプ氏が力を使う対象に北朝鮮が含まれる可能性も排除することはできない。大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名されたウォルツ氏は2019年2月ハノイ第2次米朝首脳会談直前に「北朝鮮が保有した核プログラムをすべて完全に公開(full accounting)という具体的な案を持って交渉テーブルに出てこなければならない」と主張した。北朝鮮が非核化交渉局面で最も敏感に感じる「検証」(verification)を持ち出したもので、北朝鮮の実質的な行動変化がないのに譲歩してはいけないという趣旨だった。 キューバ移民者の子孫で、国務長官に指名されたルビオ氏も「共産主義によって祖国(キューバ)が破壊されるのを目撃」(13日トランプ氏の指名声明)という家庭史を基に、北朝鮮の核や人権問題に対して強硬発言を続けてきた。ルビオ氏は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対しては「核兵器と長距離ロケットを持っている狂人」(2016年ABC放送インタビュー)と称し、2018年米朝首脳会談の局面でも「(北朝鮮の非核化に)楽観的ではない」と懐疑的な見方を表わした。 「金正恩とうまくやっていく」と大統領選挙期間中に数回強調したトランプ氏の北朝鮮政策運用に彼らのこのような原則論が影響力を発揮する可能性があるといえる。ただし、彼らも原則よりもトランプ氏に対する忠誠を優先順位に置く可能性が低くない。 ◇中東戦争を経験した軍出身 トランプ第2期外交安保ラインの共通部分 として戦場での服務経歴がある参戦勇士出身という点も挙げられる。ウォルツ氏は陸軍特殊部隊「グリーンベレー(Green Beret)」出身でアフガニスタンやアフリカなどで服務した。ヘグセス氏もイラクとアフガニスタンで服務した。 トランプ第1期でトランプ氏の無分別な行動を制御する役割を果たしたのがほぼ将軍出身の軍人という点を考慮すると、トランプ氏が領官級将校を国防長官に起用したのは究極的に忠誠派を起用して自身に従う「ワンボイス」を出すという意志だとみられる。 特にウォルツ氏とヘグセス氏は2000年代に米国が「テロとの戦争」を宣言して参入した介入主義の象徴のような中東戦場を直接経験したが、その後孤立主義「トランピズム」に転向するという特徴を見せている。これらは米国の力をこれ以上「世界の警察」役として消費するのではなく、最大のライバルである中国を牽制して米国第一主義政策を拡張するところに投射するものとみられる。国家安全保障3人衆に指名されたウォルツ-ルビオ-ヘグセスはともに強硬な反中志向でルビオ氏は2020年中国の制裁対象に入ったこともある。 尹政府も外交安保ラインも軍出身が全面に布陣している。申源湜(シン・ウォンシク)国家安全保障室長と金龍顯(キム・ヨンヒョン)国防部長官はともに対敵概念が確実で、野戦経験が豊富な作戦通に挙げられる。米国大統領選挙を3カ月後に控えた今年8月、「軍人出身安全保障室長」体制に電撃改編したのは米国の新政府と外交的疎通で問題になるかもしれないという懸念にもかかわらず、尹大統領は信頼のおける北朝鮮強硬派に力をのせた。