ブレア元米国家情報長官インタビュー「日本のサイバー対策はまだマイナーリーグ」
【ワシントン=坂本一之】ブレア元米国家情報長官は14日、オンラインで産経新聞のインタビューに応じ、日本のサイバー対策は「改善しているがまだ十分ではない」と述べた。脅威への対処に必要な相手側のサーバーに侵入して情報収集や無害化を図る「能動的サイバー防御」を実施できないため、対策レベルは「まだマイナーリーグだ」と苦言を呈した。 ブレア氏はサイバー空間の脅威に関し、平時では企業攻撃や世論工作などが行われる一方、有事は「ネットワーク上で運用される部隊の作戦が妨害される可能性がある」として部隊の行動に直接の影響が出る恐れがあるとした。 中国が「重要インフラにマルウエア(悪意あるソフト)を仕込み」有事に起動させることも試みていると指摘。「中露や北朝鮮、イランは日米を敵視し、紛争時への準備を進めている」と警鐘を鳴らした。 2022年に「マイナーリーグ」と評した日本のサイバー対策は、改善してはいるものの「まだ米英豪などのメジャーリーグ(のレベル)ではない」と語った。日本に必要な対応として能動的サイバー防御の導入と官民共同のオペレーションセンターの設置を挙げた。 具体的には、民間人のプライバシー保護とともに「敵に対しサイバー上で情報収集する権限を防衛省・自衛隊に与えるべきだ」と述べた。敵のサーバー情報などから有事の対応策を検討する必要があるとした。 米国は日本との連携強化を望んでいるが、防衛対策が不十分な日本のシステムに接続することに躊躇(ちゅうちょ)があると説明。現在の自衛隊のサイバー能力では、「米軍は機密性の高い生データを自動的に共有することはしない」と明言した。能動的サイバー防御などによる能力向上はサイバー攻撃を抑止する力となり、「自衛隊と米軍の統合運用」を大きく高めると重要性を強調した。 「中国政府が支援するハッカー組織が能力を高めている」とし、「日本は素早く対応しなければならない」と訴えた。 官民共同のオペレーションセンターに関しては、政府と民間による「情報共有や脅威の特定、脆弱(ぜいじゃく)性への素早い対応、能力開発」を提案、米国との連携も求めた。