日本人「サラリーマンの経費が控除されないのは差別だ!」 国「わかりました」⇒〈特定支出控除〉爆誕へ…“会社員が使える所得控除”の話【税理士が解説】
通常、会社員は「確定申告の対象外」だが…
源泉徴収制度により通常、会社員(サラリーマン)は、自ら確定申告の手続きをしなくて済みます(所法183(1))。でも、例外があります。次のとおりです。 (1)給与収入が2,000万円超の場合(所法121(1)柱書) (2)2ヵ所以上から給与をもらっている場合(所法121(1)二) (3)給与・退職所得以外で、20万円超の場合(所法121(1)一) 特に「(3)給与・退職所得以外で20万円超」となったケースは、要注意です。例えば、「副業収入を得ている会社員」が確定申告しなければいけないケースに該当してきます。 ところで、所得税には「10種類の所得区分」がありますが(図表3参照)、会社員が副業収入(所得20万円超)を得たとき、「4. 事業所得」か「10. 雑所得」にするか迷われた方も多いのではないでしょうか。 記事冒頭で紹介した「サラリーマン税金訴訟」では、給与所得(所法28(1))か事業所得(所法27(1))の区分の違憲性について争われました。今回は主に、事業所得(所法27(1))か雑所得(所法35(1))かの判定になります。 そもそも事業所得には、「事業性の要件」というものがあり、対価を得て継続的に行なう事業(所法27(1)、所令63十二)と範囲が決められています。 なお、事業所得と雑所得の計算のしくみは基本的に同じですが(所法27(2)、35(2)二)、損失が生じたときなどで違いが生じます。
副業会社員の「節税」テクニック?
そもそも副業収入がどの所得に該当するか、所得税法上は何ら規定を設けていません。前ページで「事業所得」と「雑所得」の計算のしくみは基本的に同じだと説明しましたが、では、どうやって、いままで会社員が赤字の事業を始めて、いわゆる「節税(?)」を図っていたのでしょうか? ポイントは、前項で図解した「計算のしくみ」にあります(所法27(2)、35(2)二)。もし「必要経費」が「収入金額」を上回ると「所得金額」はマイナス、つまり赤字になります。そして、赤字の所得がある場合、一定の順序により、他の各種所得の金額から控除することを「損益通算」といいます(所法69(1))。 赤字の所得がある場合、「事業所得」は他の所得と損益通算できますが、「雑所得」では損益通算できない(所令200)という違いがあります。副業で赤字の「事業所得」がある場合、本業の「給与所得」から、赤字分を控除(損益通算)して「節税」できるのです。しかし、「事業所得」として認められるためには、書類整理等をしっかり行ない、納税者の責任を果たす必要があります。 稲垣 啓 中小企業診断士、税理士 1977年富山県生まれ。立命館大学経営学部を中退(飛び級)し、同大学院法学研究科修了(民事法)。2011年9月に中小企業診断士、2020年3月に税理士登録。著書に『原価計算なるほど用語図鑑』(単著、中央経済社)、『行政書士・社労士・中小企業診断士 副業開業カタログ』(共著、中央経済社)などがある。
稲垣 啓
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