宝塚で33年……元宙組組長・寿つかさ、「真風涼帆は“正義感の強い人”」――千秋楽で芹香斗亜と“ハグ”の真相も
「宙組生として卒業したい」――。長年にわたって宙組の組長を務め、今年6月に宝塚歌劇団を卒業したばかりの寿つかささんはそう考えていたという。退団公演の『カジノ・ロワイヤル』のフィナーレでは、現在の宙組トップスター・芹香斗亜にバトンを渡すかのようなシーンが話題を呼んだ。ともに宙組を支えた新旧トップスターへの思いとは……。聞き手は日本テレビの熱烈な宝塚ファン、安藤翔(妻が元タカラジェンヌ)。 【映像】寿つかさ、宙組で卒業を~気づいたら芹香に飛びついていた(『アプレジェンヌ』ダイジェスト版) <寿つかささんプロフィール> 東京都港区出身。6月11日生まれ。1990年に76期生として入団。雪組を経て98年に誕生した宙組に創設メンバーとして異動。2008年宙組4代目の組長に就任。33年にわたってファンを魅了し、6月、宝塚歌劇団を退団。
■「気づいたら芹香に飛びついていた」
――退団公演の『カジノ・ロワイヤル』では、ゲオルギー・ロマノヴィッチ・ロマノフ大公を演じられました。(宝塚での)最後のお役になりました。どうですか。 私もこの『カジノ・ロワイヤル』まで、少し間抜けなおじさん、おちゃめだけれど憎みきれない――、という役から離れていて、久しぶりにやりたいなと思っていたんです。台本をいただいて本読みをして、このキャラクターだったので、本当にうれしかったですね。 それこそ集大成。いままで演じてきた役がぎゅっと詰まったような役でした。(脚本・演出の)小池(修一郎)先生の愛もたくさん詰まったお役で、最初に本を読ませていただいたときは、こみ上げてくるものがありました。 ――退団公演の期間中は充実感のある日々でしたか。 卒業にあたっての目標の一つに、千秋楽の次の日も公演があると思って、いつもと変わらない気持ちで公演に取り組みたいと思っていました。最後の特別な公演というよりは、公演に集中していきたいという思いの日々でしたね。
――フィナーレでは(次期トップの)芹香斗亜さんの胸をポンとたたく場面がありました。そして大千秋楽ではハグも出ました。これはどんな思いからだったんでしょうか。 振付家のKAORIalive先生が本当に素敵な場面を作ってくださいました。「『これから宙組を頼んだよ』という思いを込めて、腕を合わせたり肩を叩いたり、何でもいいから想いを芹香に託して」と言っていただいた。その思いを毎回毎回大切に芹香に伝えていきたいという日々でした。 千秋楽は欲が出て最大級の思いを芹香にかけたいと思いました。男(役)同士の絡みを相談するのには、やはり(トップスターの)真風(涼帆)しかいないと思って、ゆりかちゃん(真風さん)に「ちょっとキキちゃん(芹香さん)にハグしてみたいなと思うんだけど、どうかな?」と相談したら「素敵だと思います」と言ってもらえて。 私、小心者なので「よし。じゃあハグできたらハグしよう」と挑んだんですけれども、大階段を降りる直前に松風(輝・現宙組組長)に「何があっても踊り続けてくださいね」と言われました。みんな何か(サプライズで)してくれるんだという心構えはあったんですけれども、いざそのパートになった時に、芹香の音頭でみんなが「組長ーっ!」と掛け声をかけてくれた。もう気づいたら私が芹香に飛びついていました。 ハグできたらなという思いはあったんですけれども、きっと考えていなくても飛びついていた。自分でもびっくりするぐらい、気づいたらもうハグしていました。「ありがとう頼んだよ」って。 芹香の表情もぐっときて、袖に引っ込んだ後が大変でした。話しているうちにまた思い出してきました。(表情は)優しかったですね。優しくて温かくて、お互いの感謝の思いがあふれた瞬間だったと思います。