先生全体の約2割、「非正規教員」の悲痛な実態 「期間限定、契約更新は未定」、教員不足に直結も
「同一労働・同一賃金」にほど遠い学校現場
「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」によると公立小中学校での非正規教員は増え続けており、2022年度は教員数の約18%を非正規雇用が占めている。非正規の先生がいなければ、多くの小中学校で授業もクラス運営もままならないし、教員不足と直結する問題でもある。にもかかわらず大きく注目されてこなかった非正規教員の問題について、教育研究家の妹尾昌俊氏に熟考してもらった。 【グラフ】公立小中学校での非正規教員は増え続けている 突然だが、次のような求人広告があったら、あなたは応募しようと思うだろうか? ・期間限定の雇用。通常は今年度末まで。ただし産育休代替の場合、年度途中で契約終了。 ・契約更新(新年度以降などの雇用)はお約束できない(現時点では不明)。 ・仕事内容は正規とほぼ同じ。ただし、給与は正規より低くなる。 ・残業あり。ただし残業代は支給しない。 ・研修期間なし。即戦力となる人材を期待。 よほど給料が高かったり、休日が多かったりといった好条件でない限り、おそらく多くの人は応募しないだろう。実際は、そのいずれでもないわけだが……。実は、こうした求人に近いことが行われているのが、教員の世界だ。 ただし、期間限定の雇用と書いたように、非正規職の教員、講師の先生についてだ。「非正規」の定義は、論者によって多少異なることがあるが、ここでは「雇用期間に定めがあること」とする。私立でも非正規への依存が高い学校もあり考えていきたいが、以下では、多少なりともデータで事実確認できる公立学校を中心に扱う。 先ほどの求人広告に照らして、実態とファクトを確認しよう。 ・非正規職は年度末までなどの期間限定雇用であることが多い。翌年度も雇用される保証はない。 ・産育休を取る先生の代わりの場合は、翌年度以降までなどもあるが、その先生が戻ってくると、年度途中であっても、子どもたちとお別れすることになる。 ・フルタイムの常勤講師(臨時的任用教員とも呼ばれる)や再任用教員の場合は、仕事内容は正規の教員とほとんど変わらず、学級担任や部活動顧問も担う。保護者にも児童生徒にも、正規か非正規かはわからないことが多いだろう。 ・常勤講師の給与水準は自治体によっては正規職とそろえているところもあるが、ある年齢から昇給上限に来たり、正規よりも低い水準に抑えられたりしている自治体も少なくない※。 ・非常勤講師の場合は残業代はつくが、実際は支給されていない自治体も多いようだ。担当する授業時間数に応じた時給となっている場合が多く、授業準備や採点などは時給に反映されないケースも多い。 ・正規職と比べて、研修が少ない。もしくはたいした研修もなく、授業や学級運営を任されるケースもある。 ※「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」の山崎洋介さんが2012年度の大阪府の給料表により試算したところ、22歳大卒から60歳定年まで正規教諭として働いた場合と、常勤講師として働いた場合とでは、生涯賃金に約3150万円の差があった(この試算に勤勉手当や退職手当は含まれていないので、実際はもっと大きな額となる)。