日銀が17年ぶり利上げ決定、世界最後のマイナス金利に幕-YCC廃止
(ブルームバーグ): 日本銀行は19日の金融政策決定会合で、世界で最後のマイナス金利(マイナス0.1%)を解除し、17年ぶりの利上げを決めた。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決定し、2013年4月以来の大規模な金融緩和政策は転換点を迎えた。
新たな政策金利は無担保コール翌日物レートを目標とし、0-0.1%に誘導する。当座預金の超過準備に対する付利は0.1%に一本化され、3層構造は終了した。新たな市場調節方針と付利は21日から適用。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、「当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記した。
YCC廃止後の長期国債買い入れは、おおむね従来と同程度の金額で継続する。長期金利が急上昇する場合は、毎月の買い入れ予定額にかかわらず、機動的に買い入れ額の増額や指し値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施。足元は月6兆円程度だが、実際の買い入れに際してはある程度の幅をもって予定額を示すとしている。
植田和男総裁は会合後の記者会見で、今後の金融政策運営について、物価見通しがはっきりと上振れたり、中心見通しがそれほど動かないまでも上振れるリスクが高まったりした場合は「政策変更の理由になる」との見解を示した。基調的な物価上昇率が2%を下回っている間は緩和的環境が続くが、「基調的物価が上昇していけば、だんだん緩和の程度は縮小していく」とも述べた。
日銀が政策正常化への一歩を踏み出したことで、市場の関心は今後の利上げや国債購入のペースに移る。総裁が会見で緩和的環境の維持を強調しつつも、物価の動向次第では追加利上げの可能性もあり得ることを示唆したことで、4月公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示される物価見通しへの注目が高まりそうだ。
総裁は、短期金利を主たる政策金利とする運営は「普通の短期金利を政策手段とする他の中央銀行と同じような設定になる」と説明。2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったものの、予想物価上昇率などから見ると「まだ2%には多少距離がある」とし、「そのギャップに着目すると、普通の金融政策を行う上でも緩和的な環境を維持するということが大事だ」と語った。