「基本月額」+「総報酬月額相当額」が50万円を超えたら、年金が減る? その場合、受け取るはずだった年金はどうなるの?
会社員として働きながら老齢厚生年金を受給すると、「在職老齢年金制度」により、報酬額と年金受給額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となることがあります。 今回は、「在職老齢年金制度」について詳しく解説します。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
「在職老齢年金制度」とは
1.制度の概要 「在職老齢年金制度」とは、老齢厚生年金を受給している方が、厚生年金の被保険者として働いている場合、受給している老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じて、年金額が支給停止される制度です(※1)。 ここで「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額をいいます。また、「総報酬月額相当額」とは、下式により求められる額をいいます。 (その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 なお、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金の適用事業所に勤務している場合は、厚生年金の被保険者ではありませんが「在職老齢年金制度」の適用を受けます。その際「総報酬月額相当額」の計算においては、厚生年金の被保険者と同様に「標準報酬月額に相当する額」と「標準賞与額に相当する額」が用いられます。 2.在職老齢年金の計算方法 在職老齢年金制度により停止される年金額は、以下の方法で計算します(※1)。 1「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が50万円(注)以下の場合 ⇒ 全額支給 2「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が50万円(注)を超える場合 ⇒ 年金支給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円(注))÷2 注:令和6年度の支給停止調整額 「基本月額」と「総報酬月額相当額」に応じた年金支給額の早見表は、下表のとおりです。
図表1
老齢厚生年金を繰り下げて受給すると?
「在職老齢年金制度の適用を受ける年金を、退職するまで繰り下げてから受給すれば、繰下げ期間に応じた割増の年金を受給できるのでは」と考える方もいることでしょう。実際のところはどうなるのでしょうか。 老齢厚生年金を66歳以降に繰り下げて受給すると、繰り下げた月数に応じて、増額された年金を受け取ることができます(※2)。繰下げにより増額される年金額(繰下げ加算額)は、下式による増額率を老齢年金(加給年金額を除く)に乗じた額となります。 増加率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数 繰下げ加算額=老齢厚生年金×増加率 しかしながら、在職老齢年金制度により支給停止される額は、繰下げ受給による増額の対象とはなりません。このときは、繰下げ待機期間中の年金の支給割合(平均支給率)によって加算額が計算されます。 具体的には、先述の繰下げ加算額に平均支給率を乗じることにより、加算額を計算します。 平均支給率=月単位での支給率の合計÷繰下げ待機期間 月単位での支給率=1-(在職支給停止額÷65歳時の老齢厚生年金額)