「ここで獲らないとダメだ」 ベアトロフィへの執念/古江彩佳インタビュー<後編>
相棒にちょっと申し訳なさそうに言ったが、これだけコンスタントに上位で戦って稼いでくれる“ボス”のなんと心強いことか。今季米ツアー24試合で予選落ちは6月のダブルス戦「ダウ選手権」のみ。3月「ファーヒルズ朴セリ選手権」(初日103位)、「フォード選手権」(同96位)、4月「JMイーグルLA選手権」(同99位)と大きく出遅れた試合でも巻き返してカットラインをクリアした。ブレない積み重ねがベアトロフィ獲得につながっている。 これまで日本勢が届かなかった栄誉ある賞を意識するようになったのは、シーズンも終盤に入ってからのこと。もともと熱心にスタッツをチェックするタイプではないこともあり、「メディアさんから質問されて、『私はそういう位置なんだ。いい位置にいるなら獲りたい』って」。エビアンに続く今季2勝目とともにターゲットができた。
勝負弱さと決別 宮里藍の称賛
最終戦「CMEグループ ツアー選手権」の3日目を終えた段階で平均ストローク1位のユ・ヘラン(韓国)にわずか「0.0002」及ばない状況。いつもならスタッツ同様、自分のプレーについて書かれた記事も見ない。ただ、この時ばかりは違った。「お父さん(日本にいるコーチの父・芳浩さん)が送ってきてくれた。やっぱり、お父さんも獲ってほしいと思っていたみたいで、情報を教えてくれました」。2人の最終日のスコア別にタイトルの行方を解説したものに目を通し、「『69』は絶対だなと思いました。向こうが『69』を出してきても、自分が『69』を出せば(2人受賞で)1位を獲れるのは記事で分かっていたので」とインプットしていた。 無欲でプレーした結果ではなく、はっきりと狙いに行って出した「68」での逆転戴冠だから喜びも大きい。「それこそ、オリンピックは2回とも落ちているので。メディアさんにいろいろ聞かれて、自分の中で意識しすぎて落ちているって捉えているので。今回も質問されて、頭に入っていて、自分も獲りたい。ここは負けられない、ここで獲らないとダメだって。自分の中では大きなことって3回目だと思ったので、やっとプレッシャーに負けずに獲れたなって」 2021年「東京五輪」、今年8月「パリ五輪」と惜しくも日本代表入りを逃してきた。日米で優勝を遂げ、メジャーの頂点に立った。周りがどれだけ認めてくれても、自分の中に見え隠れする“勝負弱さ”を払拭するためにベアトロフィが必要だったと明かす。