「沖縄は植民地状態」台湾出身記者と遺骨収集ボランティアが語り合ったこと 台湾有事への抑止力、立場超え議論 劉彦甫さんと具志堅隆松さん
台湾出身の東洋経済新報社記者で研究者の劉彦甫(りゅういぇんふ)さんが28日、那覇市で講演した。中国の侵攻を阻止する抑止力の必要性を前提に、「南西諸島の過剰な負担をどう分配するのかが焦点になる」と指摘。抑止力を否定する沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんと議論し、立場を超えて対話を継続していくことで一致した。 【イメージ図】政府が台湾有事を念頭に検討する避難計画原案 劉さんは、台湾が日本を含む各国による植民地化を経て民主化した歴史を解説。今は他国から地政学的に「どこにあるか」で重視された時代に終止符を打ち、「台湾とは何か、中国の独裁政権とは違う、と国際世論に訴えている」と説明した。 沖縄で進む軍拡については「結局、沖縄は日米から『どこにあるか』でしか見られていない」「台湾の脱植民地化の歴史からは沖縄はいまだ差別され、植民地的な構造にあるように見える」と語った。 その上で「軍隊があるから戦場になったという沖縄戦の教訓が、国際社会に通じるかは別問題。台湾の人々は軍隊が機能しているから中国の侵攻を免れたという歴史経験を持っている」と、沖縄からの発信の戦略について質問した。 具志堅さんは「もし沖縄に日本軍がいなければ沖縄戦はなかった。米軍に占領されることはあっても、20万人の死者は出なかった」と説いた。 沖縄が植民地状態であることには同意し、「台湾など抑圧されている周辺の国や地域と手を携えていく」と話した。劉さんとの意見の違いを踏まえつつも、「違う考えを排除しては駄目だ。もっと台湾の人と対話を重ねていかなければ」と今後に期待した。 講演会はカトリック平和委員会などが主催した。(編集委員・阿部岳)