年収1000万以上も夢じゃない!?若者たちが続々と参入…いま《酪農の世界》がアツい「意外な理由」
年収1000万円以上の酪農家も…!驚きの生活
もし本気で酪農家を目指すのであれば、やはり一番気になるのは「収入」だろう。小林准教授は、さらに前向きになれそうな話を教えてくれた。 「たとえ同じ頭数の牛を飼っていたとしても、農家によって収支のバラつきが大きいので、経営事情は千差万別です。稲作や畑作であれば収穫量はある程度予測できるのですが、酪農は牛の健康状態や与えるエサによっても大きく変動してしまいますからね。 ただ、家族経営でうまく回っているところは、年収にするとおそらく1000~1500万円ほどの所得を得ているんじゃないかと思います。意外に思われるのですが、こぢんまりと『放牧経営』を行っているような事業者のほうが所得率が高いというのが興味深いところです」 日本国内の場合は、「舎飼い」と呼ばれる、牛舎の中で完結する飼育方法が8割以上を占めている。放牧と異なり、スタッフの目が届きやすく管理がしやすいことが特徴で、少ない土地で効率よく牛を飼育することができる。一方で、「放牧経営」の場合は、広い放牧場の整地に始まり、放し飼いされている個体ごとの体調管理なども必要になる。 「これだけ聞けば、放牧経営のほうは『牛とともに24時間365日』といった印象を受け、手間がかかって大変そうと思われるでしょう。これが意外とそうじゃない。 一度、牛たちを放牧に出してしまえば、帰ってくるまで人間のほうは自由です。その間お子さんと一緒に遊びに行ったり、趣味を楽しんだりという酪農家さんもいらっしゃいます。昼夜放牧の時期であれば5時間程度の労働で、あとは自由な時間です。仕事上の人間関係に悩まされることもほとんどありませんし、家族で穏やかに暮らしている方がたくさんいる。お会いすると本当に羨ましくなりますよ」
「理想の酪農」のあり方とは
農業は大規模化することで、生産力が高まって売上が増えるというのがこれまでの常識だった。だが、近年では大規模経営を行う酪農家のほうが、経済的に厳しい状況に陥っているという。 「たくさんの牛を飼養していて売り上げがすごそうだな、という事業者のほうが案外火の車だったりするのです。これまでは家族経営の限界化が盛んに言われて、国も大規模化を図る方向で進めてきたんですが、その転換期がきている。 何百頭という牛を世話する会社は、そのうち2割ほどのロスはしかたないと見越したうえで経営を行うスタイルを取ってきました。それが、これだけ全般的に物価が上がってしまうと、その条件が崩れてしまう。牛のロスが出ることで、成立可能な損益分岐点を超えてしまうようになったのです。大規模経営においても一頭一頭をいかに丁寧に大切に飼っていくのか、ということがとても大切になっています。 そこで、一頭一頭を丁寧に見る、手間も労働力もかかって時代遅れだと思われていた家族経営や放牧酪農が、かえって創意工夫やマネジメントがしやすいと見直されてきているんです」 酪農は土と草と牛があって、その循環の中で生産物が生まれるという、ごくシンプルな仕組みで成り立っている。その原理原則を突き詰めていくことが、政治や経済などの影響に左右されない、最も安定的で「理想の酪農」といえるのかもしれない。 ………… 【もっと読む】『悲報「牛丼《うまい、安い、早い》はもうすぐ終わります」空前の牛肉高騰、10年で5割も値上げ…日本人を襲う「牛丼ショック」』
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