セガゲーム原作のドラマ「龍が如く」酷評は正当なのか 実写で“ヤクザ”を描くことが難しくなった現実
ネタバレは極力避けますが、作品の中でどのように表現されたのかというと、親のいない桐生たちが親の代わりになるものを探した末に、ヤクザの世界に入り、そのヤクザの世界でもご法度の「親殺し」がストーリーのカギになっていきます。つまり、「親殺し」という選択に彼らのなす術のなさを表しているのです。 骨太ストーリーに仕上げたドラマについて、龍が如くスタジオ代表の横山昌義氏も太鼓判を押し、「主観視点で楽しむのがゲームだとしたら、これは究極の客観視点で楽しむ『龍が如く』」と公式コメントで語っています。
■撮影許可が下りないことも 2005年に発売されてから愛され続けるゲーム原作をドラマ化する以上に挑戦的だったことが実はほかにもあります。それは、実写のヤクザものという条件でした。武監督から聞いた限り、撮影から仕上げ時まで苦労した様子です。ヤクザの世界を描くドラマそのものがタブーな時代であることが背景にあります。 場面に応じてセットを組むだけでなく、廃墟と化した場所を選んで撮影することもあるなか、ドラマの内容を説明した途端に撮影の許可が下りないことがあったそうです。また楽曲協力に関しても方針の違いから断られることも。
そんな事態を受けて「暴力を肯定している作品では決してありませんが、表現することの自由を奪われるのはどうかと思います。今の時代、とにかくマイナスになることは“全部やめましょう”となる。もうちょっと考え直したほうがいいんじゃないかと思いますね」と武監督が訴えます。 「ドラマの中で悪者が登場しない物語って僕は見たくないですよ。人はどこかで足りないところがあったり、ズルいところがあったり、歪んでいるところがある。問題を抱えているわけですから、この作品の中でも悩みや苦しみ、そして暴力に対する虚無的な気持ちを表現しています」
■「星1つ」評価が集まるがランキングではトップ10入り こうした制作側の思いとは裏腹に、Amazonカスタマーレビューでは「星1つ」に評価が集まり、アメリカ批評サイトのロッテントマトなど海外でも一般ユーザーからは手厳しい反応を受けています。一方で、配信直後に100以上の国と地域のAmazonのプライム・ビデオ公式ランキングでトップ10入りを果たし、数ある作品のなかで注目度が高かったことも事実。 極端に低い評価は原作との比較が多く、高い視聴実績は原作のネームバリューに加えて、今の日本で手を出しにくい実写の題材を扱ったことも数字に結び付いたのではないかと思います。現段階ではハイリスクハイリターンと言えますが、ドラマ化から長期的なリターンに繋がっていく可能性はあります。
長谷川 朋子 :コラムニスト