今も残る「政治とカネ」のグレーゾーン:「透明化」と「公私峻別」徹底する抜本改革を
1994年「政治改革」とその後:積み残された課題
「政治とカネ」を巡っては、日本ではリクルート事件(1988年)、東京佐川急便事件(92年)などを経て「金権政治」への批判が高まり、93年に細川(護熙)内閣が誕生。自民党は結党以降初めて下野し、55年体制が終わった。94年には公職選挙法と政治資金規正法の改正、政党助成法の制定など、一連の政治改革が実現した。 選挙制度では衆議院の中選挙区制を廃止し、小選挙区比例代表並立制を導入した。また政党助成金制度が導入され、同じ党で派閥が違う政治家同士が争う構造から、より政党間の競争を重視する政治システムへの転換が図られた。 これらの改革は「政治とカネ」問題に関して一定程度効果を挙げた。例えば、総務省がまとめた政治資金総額(中央分)は、ピークであった1990年前後の時期には1700億円~1800億円であったが、その後徐々に減少、2022年では1058億円とほぼ半減している。衆院選の選挙違反検挙数も、1994年以降に大幅に減少した。データの解釈は慎重に行うべきだが、全体として日本の民主政治が55年体制下より「金権脱却」「選挙浄化」の方向に向かってきたのは事実だ。 一方で、現在の政治資金規正法、及び公職選挙法の選挙運動・選挙資金規制は仕組みが複雑で、グレーゾーンが多いままの状態にある。まず、収支報告を巡っては政治家個人の資金管理団体のほか、後援会や政党支部を使うことができ、政治家には「3つ以上の財布」があると言われている。さまざまな利益団体との金銭的関係には不透明な部分が残っている。支出についても同様だ。 また、税金から交付される政党助成金は総額で年間300億円以上にのぼる。それを原資とする、政党から党幹部など政治家個人に支出され、時に年数億円の規模となる「政策活動費」などは使途の公開が不要となっている。政党助成金という「公金」を受け取っている中、この運用は厳しく批判されるべきだ。国会議員に歳費外で月100万円が支給される旧文通費(調査研究広報滞在費)も、使途公開が実現しないままだ。このように、グレーな環境で政治家が活動を続ける限り、「政治とカネ」を巡る問題を一掃することは難しいだろう。