大麻使用者の2割が依存症に、精神症リスクは「コカイン以上」 続々判明する娯楽用大麻の害
心臓など体への影響
大麻の日常的な使用は、身体的にも重大な問題を引き起こす。 冒頭で取り上げた医学誌「Journal of the American Heart Association」の大規模調査による論文によると、大麻を常用する人は、心臓発作(心筋梗塞)などの心疾患や脳卒中のリスクが高くなるという。この研究の対象グループでは、心臓発作の発生率は25%、脳卒中は42%高くなった。 その原因はおそらく、THCが動脈の血流にもたらす影響や、カンナビノイド(大麻に含まれる生理活性物質)の受容体が循環器系全体に存在するためだと考えられる。喫煙によって大麻を摂取している人の場合、THCと一緒に吸い込む微粒子物質によって、心臓病のリスクはさらに高まる。 大麻の使用と、抗がん剤治療後の吐き気や嘔吐の改善を結びつける研究もある一方で、医学誌「BMJ」のレビュー論文によると、実際には常用者は長期間、過剰に繰り返す嘔吐に悩まされる場合があるという。「これはまれなケースですが、大麻の使用者が増えるにつれて増加しつつあります」とハシン氏は言う。 妊娠中の女性が大麻を常用していると、早産や、危険なほど小さな赤ん坊を出産するリスクが高くなる。これが大麻自体に原因があるのか、それとも、妊娠中に大麻の使用を選択する人々のライフスタイルによるものなのかを判断するには、さらなる研究が必要だとソルミ氏は言う。
大麻依存症
多くの人が、大麻はアルコールよりも安全だと考えているが、2020年に学術誌「Addictive Behaviors」に発表されたレビュー論文によれば、使用者の5人に1人は大麻依存症になる。 大麻を渇望する、同じ効果を得るためにより多くの量が必要になっていると感じる、大麻をやめたり減らしたりしようとして失敗したなどの諸症状がある場合は「危険信号です」とハシン氏は言う。 アルコールと同じく、大麻依存症は対人関係や、経済的、法的、健康的な問題を引き起こす可能性がある。 大麻依存症に対して特に高いリスクを抱えている人々がいる。米国の退役軍人における発症率は、2005年以降、大幅に増加している。その背景には、強くなった大麻の効き目や、合法化で大麻が受け入れられやすくなったこと、慢性的な痛みや精神障害に対する自己治療としての使用などがあると、ハシン氏は考えている。 若者たちもまた、大麻依存症のリスクにさらされている。低い年齢から大麻を使い始めた場合や、家族に依存症の患者がいる場合、自身が大麻依存症になる確率は特に高まる。 「25歳未満の人は、大麻に一切手を出すべきではありません」とソルミ氏は言う。「大麻に対して自分の体がどのように反応するのか、彼らはまったくわかっていません。自分の脳と健康を危険にさらすことになります」 「大麻はリスクのない無害な薬物ではありません」とラーマンダー氏は言う。「大半の人は大丈夫でしょうが、だれに問題が起こるかは予想できないのです」
文=Meryl Davids Landau/訳=北村京子