ITインフラに脚光を--カプセルトイ「手のひらネットワーク機器」の舞台裏
異色のネットワーク機器玩具が異例の大ヒット 佐藤さんは、「メーカー数十社が毎月約500種類の新商品を展開するカプセルトイの市場では2~3万個が売れれば良いと言えます。その中で手のひらネットワーク機器は10万個以上を販売する大ヒットでした。最初はここまで売れるとは思っておらず、販売先の問屋も売れ行きを懸念していました」と明かす。 第一弾商品は、初回販売からわずか数日で完売が相次ぎ、業界では異例という同年9月に再販を実施したが、これも再販開始の翌日に完売してしまったという。「初回販売後にインターネット上に高値で転売される事態が発生してしまい、これでは商品を求めるお客さまに迷惑がかかってしまうので、急いで再販することにしました」(佐藤さん) 一見すると、IT機器のカプセルトイはとてもマニアックに映るだろう。しかし、発売と同時に「X」などのソーシャルメディアでは、エンジニアから高評価が相次いだ。佐藤さんによれば、通常のカプセルトイでは同じ商品が出でしまうと“かぶり”として嫌がられてしまうが、手のひらネットワーク機器では「冗長構成にできる」と歓迎された。また、IT機器にほとんどなじみがない一般層からも「マニアック!」と珍しがられたり、フィギュアファンが“映える”小道具として活用し作品をソーシャルメディアに投稿して盛り上がったりする様子が見られたという。 「カプセルトイのコラボレーション企画は、同業他社との競争を嫌って、その業界の特定の1社による監修というケースがほとんどです。しかし、手のひらネットワーク機器では複数社のベンダーさんが協力する珍しいケースで、本来ならあり得ないコラボレーションが実現しました」(佐藤さん) ITインフラへの興味、関心、理解が広まる 小松さんによると、「ネットワーク機器のカプセルトイを考えた会社」として取引先や顧客などからの同社の認知度が大いに高まり、本来の目的だったエンジニア人材の獲得にも効果を上げているという。「海外でも話題になったようで、韓国から新卒で応募された方がおり、米国からも問い合わせがありました」(小松さん) また、大学や専門学校といった教育機関から両社への問い合わせが多くあったといい、学生や生徒の研修目的で数百個単位の購入を希望する相談も多く寄せられたそうだ。 両社が手掛けた手のひらネットワーク機器は、企画から売れ行きまで、まさに異例づくしの展開となり、ITエンジニアだけでなく一般からも多くの関心を集めて、ITインフラの脚光を当てることに成功したと言えるだろう。 なお、商品化に際して賛同ベンダーとの間で金銭的なやりとりは一切発生しておらず、賛同ベンダー各社は、純粋に「ITインフラを盛り上げたい」という思いで協力しているとのこと。ノベルティーなどの目的で個別に企業から自社製品のカプセルトイ化を希望する依頼も多いそうだが、「企画の目的に合わなくなってしまいますので、お断りしています」(小松さん)という。そもそも「何が出るか分からないわくわく感」というカプセルトイの本質からも離れてしまう。 第一弾の反響を受けて両社は、第一弾のラインアップでリニューアルをした「手のひらネットワーク機器 1.1」と、APRESIA Systems、Extreme Networks、デル・テクノロジーズ、フォーティネットジャパンが賛同して新たなラインアップで展開する「手のひらネットワーク機器 2」を6月13日から全国のカプセルトイ自販機で販売する。佐藤さんによれば、既に第一弾と同じ10万個以上の受注があるといい、販売予定店舗の情報は、ターリン・インターナショナルの公式Xで紹介している。 また、6月12~14日に千葉・幕張メッセで開催される「Interop Tokyo 2024」では、エーピーコミュニケーションズと賛同ベンダーからA10ネットワークス、フォーティネットジャパン、古河電工が各社のブースで手のひらネットワーク機器を配布(条件や個数、アイテムなどは各社ブースにて要確認とのこと)する。各社の分を集めるとラックを組み上げることができる。 小松さんと佐藤さんは、今後も手のひらネットワーク機器の第3段などを実現して、引き続きITインフラを盛り上げていきたいと述べる。記者からは、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)システムやガスタービン発電機などのデータセンター設備のカプセルトイ化をリクエストした。