最初は泣いてばかり。でも今は、自分を誰かと比べることもなくなった。光浦靖子がカナダで学んだこと
誰かと比べることがなくなった
――なかなか英語が上達しないってところも、すごくリアルでした。 光浦 もうびっくりしちゃった(笑)。どれだけ勉強しても全然聞き取れないんです。 ――外語大を出られた光浦さんでもそうなんですか……。 光浦 人それぞれ耳がいい、悪いとかタイプがあるんじゃないですかね。私の場合は、発音の違いが聞き取れない。たぶん慣れるのに10年はかかるなと思って。 留学も1、2年したらペラペラでしょってみんな思うと思うんですけど、それはたぶん子どもとか幼い人たちです。 子どもだったら1年住めばもうネイティブ並みにペラペラしゃべれるから。 ――光浦さんは現地でなるべく日本語を使わないようにと意識されていましたよね。 光浦 私もそうすれば自然と話せるようになるとか、聞き取れるようになるって、勝手に思い込んでたんですよ。でも、長年にわたる「こびりついたもの」が邪魔して、子どもみたいに素直にシュって吸収するのは難しい。 ――その事実にショックは受けなかったですか。 光浦 もうずっと泣いてましたよ。もう無理だって。でも、もう無理だって……諦めました。 ――諦める。 光浦 たぶん10代の子が1年でできることを、私は3年、3倍はかかる。なので、6年住んで2年住んだぐらいかなと思って。だからまだ自分の中では留学して1年目ぐらいの成果しか出てない。でもいつかはできるだろうという希望は持っているので、完全に諦めたわけじゃないですよ。最終的には英語ペラペラになるのが目標なんで。ただ、全てを100パーセントできるようにならなきゃいけないという、その呪縛はもうなくなりました。あと、「みんなできるのになんで私はできないんだろう」って誰かと比べることもなくなったかな。 光浦靖子(みつうら・やすこ) 1971年生まれ。愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と「オアシズ」を結成。国民的バラエティー番組『めちゃ×2イケてるッ! 』のレギュラーなどで活躍。また、手芸作家・文筆家としても活動する。大評判となった前著『50歳になりまして』(文藝春秋)のほか、『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』(文藝春秋)、『靖子の夢』(スイッチ・パブリッシング)、『傷なめクロニクル』(講談社)など。2021年からカナダに留学。
西澤千央