宇垣美里が語る、松山ケンイチの可愛さもピカイチ!青春時代の空気がギュッと詰まった「リンダ リンダ リンダ」 <宇垣美里のときめくシネマ>
アナウンサー・俳優として活躍中の宇垣美里さん。映画・マンガなどさまざまなサブカルチャーをこよなく愛する彼女が、映画について語るこの連載。今回は、甘くてほろ苦い青春の躍動を描いた「リンダ リンダ リンダ」(10月18日(金)19:00~WOWOWシネマ)と「桐島、部活やめるってよ」(10月21日(月)19:15~WOWOWシネマ)の部活系青春ムービー2本の胸に沁みるポイントをたっぷりと解説! 【写真を見る】 決して“一軍女子”ではない4人がぶつかり合いながらも最後のステージを目指す ■くだらないケンカやぱっとしない恋愛に等身大の青春を感じてたまらない「リンダ リンダ リンダ」 セーラー服、部活の掛け声、リプトンの紙パックや手のひらサイズの英単語帳を見るととたんに胸がぎゅーっと切なくなる。あの頃、私は世界で一番強かった。戻りたいわけじゃない、やり直したいわけでもない。ただ、終わりがそこにあると分かっていながら気づかないふりをして駆け抜けた、あの頃の輝き。眩しく思ってふと振り返りたくなるのは必然とも言える。 「リンダ リンダ リンダ」はそんな青春時代の空気をぎゅっと閉じ込めた、タイムカプセルのような作品。見れば必ずあの頃を思い出して、思わず微笑んでしまうこと間違いなし。 舞台は地方のとある高校。高校生活最後の文化祭の直前にメンバーの怪我やそれに端を発する喧嘩によってバンドメンバーが減ってしまった軽音部の響子と恵と望。彼女たちは次にこの道を通った人をボーカルにしよう!という思い付きで、強引に韓国からの留学生・ソンをメンバーに引き入れる。最初はたどたどしかった演奏も、練習を重ねていくうちに少しずつ上達し、メンバー間の距離も縮まってくる中、ついに文化祭当日がやってくる。 彼女たちは所謂"一軍女子"のようにキラキラしているわけではない。テンションは低めだしコミュニケーション能力も高くなさそう。やる気が漲っているわけでもない。だからこそ、ぼそぼそと会話しながら少しずつ仲良くなっていく過程に、くだらない喧嘩やぱっとしない恋愛に、そもそも恋愛よりも今はみんなといる方が楽しいんだと駆けだす様子に、等身大の青春を感じてたまらない。ソンのがむしゃらでまっすぐな歌声が涙腺を刺激して、歌うシーンのたびに何故だかうるっときてしまった。ソンに恋する若かりし松山ケンイチの可愛さもピカイチ。 夜中の学校に忍び込んで、屋上でこっそり練習している時に望のこぼした「こういう時のことって忘れないからね」というセリフに、本番より、むしろこういう何気ないやり取りを一生覚えていたりするんだ、という内容に、本当にそうなんだよなあ、としみじみ。もちろん、その当時は分かっていなかったけれど。 多分、彼女たちはバンドを続けたりはしない。メンバー同士も疎遠になっていくだろうし、きっといつか忘れる。それでも、ふとあの数日間を思い出して励まされることが、懐かしく思うことが、きっとあるんじゃないだろうか。それが、青春。ああ、ブルーハーツと青春ってどうしてこんなにも相性がいいんだろう。 ■神木隆之介、東出昌大、松岡茉優ら豪華な面々のフレッシュな演技が味わえる「桐島、部活やめるってよ」 キラキラしたところ、宝物のように輝く日常のかけがえのなさだけが青春じゃない。狭い学校の、さらに狭い教室に押し込められた有象無象。肥大化した自意識を抱えた生ける爆弾のような十代を捕まえて、住んでいる場所や偏差値だけですし詰めにした挙句に「みんな友達だよ!」だなんて、まったく乱暴極まりない。そこで比較され色分けされ続けるあの日々は、今考えてもまったくもって狂気の沙汰。そんな青春の残酷な一面を、独特な空気感を、これでもかと言わんばかりに見せつけてくるのが「桐島、部活辞めるってよ」だ。 田舎の高校でバレー部のエースである桐島が部活を辞めるというニュースが駆け巡る。学校のスターだった桐島の退部を巡り、桐島の親友や彼女、その友人たちや、果ては関わりのあまりないクラスメートにいたるまで、学校の人間関係に歪みが生まれていく。 神木隆之介に東出昌大、橋本愛、山本美月に松岡茉優......今思うとあまりにも豪華な面々のフレッシュな演技を味わうことができる本作。同じ時間を異なる視点から語り直すことで、人によって世界がまるで違うように見えていることが分かってくる。いわゆる"スクールカースト"が生々しく描かれており、クラスの一軍男子や一軍女子、その中にいながらどこか居心地が悪そうな女子や吹奏楽部に映画部といった文化部など、必ず誰かに感情移入してしまうと共に、そこから自分の学生生活と照らし合わせて、思わず語り出したくなってしまうことだろう。 この作品を初めて見た時、私は大学生で、なんとなく居心地が悪かったことを覚えている。でも高校時代と距離の近かったあの頃よりも、ずっと遠いところまで離れてしまった今の方がぐっと刺さる。終盤の屋上でのシーンの神木隆之介、さらにその時の東出昌大のなんともいえない思いの溢れ出しそうな表情といったら。ずっと変わらず自分を信じ続けている野球部キャプテンの在り様に勇気づけられた。 もう一度やり直せ、と言われたら全速力で逃げ出してしまうだろう、青春。それでも時に振り返りその思い出に浸りたくなるのも青春で。帰れない場所だからこそ、時々映画の中でその空気に触れて何かを思い出したような気持ちになりたくなる。大人になった私を、あの頃の私はどう見るだろうか。褒めてくれたら、いいな。 文=宇垣美里 宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。
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