宗教行事をイベントに ── イースターで消費喚起したい企業はSNSを狙う?
2017年のイースター(復活祭)は、4月16日でした。国内でも小売店や飲食店などで、これにちなんだキャンペーンなどを見かけましたが、そもそもは宗教行事。なぜ企業は日本で馴染みのない「イースター」に注目するのでしょうか。
企業のキャンペーンを手掛けているマーケティング会社の担当者は「季節性の高いイベントや文化を世の中に啓蒙することで、消費者の新たなニーズ喚起のきっかけにしようという狙いは大きい」と話します。 そもそも、日本には欧米のように宗教観などに基づいた国民的なお祭りが少なく、また米国のブラックフライデーのように全国的に購買行動が過熱するきっかけも多くありません。 チョコレートを贈るバレンタインデー、そのお返しにクッキーなどを贈るホワイトデー、節分にお寿司を食べる恵方巻など、日本の季節イベントの多くは、企業が商品やキャンペーンなどを通じて発信することで日本に文化として根付いてきました。こうしたイベントをきっかけとして消費意欲を刺激しようという狙いが見えてきます。 イベントプロデュースなどを行うTokyo Flamingoが行った調査によると、イースターの認知率は87.6%。しかし、イースターが「イエス・キリストが死後3日目に復活したことを記念する」という由来を持つキリスト教最大のお祭りであることや、その記念日が「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」である(それが今年は4月16日だった)という複雑な決まりを持っていることは、あまり知られていません。 日本では、多くの人にとってイースターがどういうお祭りなのかという意味はあまり重要ではなく、むしろ、うさぎや卵のモチーフや春らしいパステルカラーなどの飾りといったイベントとして認知されているのではないでしょうか。
イースター商戦の狙いは“ホームパーティー文化”の拡大
春のイベントとしての認知を拡大させる火付け役になったのは、東京ディズニーリゾートが2014年から毎年開催している「ディズニー・イースター」だといわれています。 東京ディズニーリゾートに限らず、他の遊園地やテーマパークでもイースターにちなんだイベントは春の定番行事となりつつあり、こうしたイベントの盛り上がりに追随する形で多くの企業でもイースターを春の大きな商機にしようという狙いがありそうです。 大型複合商業施設「イオンモール」などを展開するイオンリテールでは、3月17日から『Let’s start EASTER party!』と題したキャンペーンを展開。きゃりーぱみゅぱみゅを起用した大規模なプロモーションを展開したり、イオンモールの店内でエッグハントが楽しめるイベントを展開したりするなど力を入れていました。 アイスクリーム販売大手のサーティーワンアイスクリームも『WONDERFUL EASTER』と題したキャンペーンを展開して期間限定メニューやスヌーピーとコラボレーションした限定商品を販売したり、製菓大手のロッテではイースターにちなんだ期間限定パッケージの「エンジョイイースター!」シリーズを販売するなど、イースターを新たな消費喚起のきっかけにしようという動きは様々な企業から見られました。 イオンリテールの広報担当者に聞いたところ、「クリスマスやお正月などの際に(外食ではなく)自宅でパーティーを楽しむシーンが増えている点には着目している。イースターは春の暖かくなってきた時季のイベントということもあり、自宅でのパーティーやピクニックなど家族や友人が集まったときの過ごし方のひとつとして食品だけでなくピクニック用品など関連商品も提案している」とコメントしていました。