「完全な非核化」「CVID」実現にはどんなプロセスが必要か?
何発あるか? 処分はどうするか?
まず、核兵器の廃棄にはかなりの時間がかかることが問題になるでしょう。核兵器は、当然のことですが、簡単に廃棄できる状況にはありません。爆発や盗難など不測の事態に備えて手厚く防護されているはずです。 また、核兵器は1発だけなら事は比較的簡単ですが、北朝鮮は数十発保有しているとも推定されており、そうであれば複数の場所に保管されている可能性があります。廃棄すると言ってもどこから手を付けるかも問題になります。また、廃棄した核兵器をどうするか、国外へ搬出するのか、北朝鮮内で処分するのかなども決めなければなりません。 核兵器を廃棄した場合、その代わりに通常兵力で補うというのが軍としてありうる発想ですが、そのことについて具体的にどのような手当てが必要か、また、代替措置を講じることはそもそも可能かも分かりません。 核開発に関わった研究者・技術者の処遇も問題になります。
北朝鮮国内の抵抗や必要な手続き
また、核兵器の廃棄には、米国、北朝鮮それぞれの軍でも複数の機関が関与することになるでしょうし、その間で意見の違いが生まれることもあり得ます。 北朝鮮では、金委員長が「非核化」の決定を行ったことは明確であっても、金委員長の決断についていけない人もいるでしょう。たとえば、人民軍や労働党の強硬派です。 金委員長は、トランプ大統領との会談で、「非核化」を決意し、米国の大統領との会談にくるまで大変な道のりがあったと述べました。我々外部から見ているだけでも、2回その趣旨の発言をしました。北朝鮮がなけなしの資産を投入して開発してきたことであり、金委員長の急激な方針転換に反対、ないし疑問を呈する勢力があったことは想像に難くありません。 金委員長はすでに労働党大会を開催するなどして新しい対外方針を説明しています。その中で核の廃棄も説明していると思われます。さらに、日本の国会にあたる最高人民会議を前倒しで開催するとも言われています。 北朝鮮の現憲法は、北朝鮮を核保有国と明記しており、「非核化」すればその改正が必要となります。憲法改正を行うのは最高人民会議です。 これらは北朝鮮自身が決める問題でしょうが、その処理に時間がかかることは米国としても理解しなければなりません。