ダイキン井上会長が退任「カリスマ不在」の前途、30年ぶりのトップ交代で直面する“3つの課題”
アメリカでは現地で販売会社の買収を進め、課題となっていた営業力の強化に乗り出している。ただ5月の決算会見時に十河社長は「レップ(販売会社)の買収は想定より遅れている」と語っている。インフレや金利の上昇といった外部環境の変化もあり、2023年度には米州全体で売上高が前期比82%に沈んだ。2024年度も前期比ほぼ横ばいを計画している。 ■コト売りへの移行も課題 2つ目の課題は、ビジネスモデルの転換だ。中長期ではエアコンなどの空調機器の販売にとどまらず、サービスで収益を得る事業構造への転換が求められている。
かつて日本の電機メーカーが得意としてきたテレビやパソコンなどは、製品のコモディティ化が進んで差別化が難しくなった。格安の労働力と大量生産によってコストを大幅に引き下げた中国や韓国の企業が台頭し、多くのメーカーが撤退を余儀なくされた。 エアコンではダイキンをはじめ、パナソニックや三菱電機などが世界大手の地位を守っているものの、中国の格力(GREE)や美的集団(Midea)などが勢力を伸ばしている。これからエアコンの普及が進むインドや東南アジア、アフリカなどの市場では激戦が予想される。
空調機器で利用されているヒートポンプ技術は、すでに実用化から100年近く経過しており、単体での技術革新は限界に近づきつつある。技術が陳腐化すれば、価格だけが差別化要素となるだけに、日系メーカーにとっては厳しい戦いになる。 そこで求められるのが、個人向け、法人向けともにモノ売りからサービス中心の事業モデルへの転換だ。しかし業界首位の座にあるダイキンですら、まだ青写真を描けていない状況にある。 ■社内改革も喫緊の課題
こうした取り組みを進めていくうえで避けて通れないのが、3つ目の課題であるガバナンス面での改革だ。 大手企業を中心に経営の透明性を高めるため、取締役会の過半数を社外取締役にしたり、幹部人事を行うために独立した指名委員会や報酬委員会を設置したりする動きが続いている。 ダイキンには10人の取締役がいるが、そのうち6人が社内登用。社外取締役は少数派だ。6月の総会には井上会長の秘書を長年勤めてきた森圭子氏が新たに取締役候補となり、女性取締役が2人に増える。