<スポーツライター藤原史郎の目>高校野球 広島新庄、センバツ初戦を前に 大きかった、広陵戦敗戦 /広島
センバツ大会が開幕し、広島新庄は22日にいよいよ初戦を迎える。宇多村聡監督はこの1年を振り返る。「あの広陵戦での敗戦が大きかった」 2020年4月に名将・迫田守昭氏から監督を引き継いだ宇多村は、7月11日から始まった夏季県高校野球大会が公式戦の初采配となった。広島工大高との1回戦から世羅、如水館と3試合を完封勝ち。4回戦では、粘る大竹を七回裏に逆転で制した。そして8月1日、準々決勝で広陵と対戦。八回裏に逆転を許し、8―9で惜敗。この試合では、新チームで左右のエースとなる秋山恭平も花田侑樹もコンディション不良でベンチ入りしていなかったが、宇多村はそれを理由にしなかった。 「自分が落ち着いていない時、選手はそれを敏感に感じ取っていた。あの敗戦で、選手を信じてどっしり構えようという気持ちに切り替えられた」 10日後にあった甲子園交流試合では、前年秋の近畿地区王者の天理(奈良)に快勝した。好投していた3年生のエース・秋田駿樹から2年生の秋山への思い切った左腕リレー。攻撃では無死一塁からの強攻も見せ、多様さも披露した。迷いのない采配が、天理有利の下馬評を覆した。 新チームになってからの連勝も、宇多村采配の切れ味と見る。秋季県大会では夏に敗れた広陵との準々決勝を9―2と七回コールドで圧勝した。この試合も、1-0の接戦となった盈進との決勝も右腕の花田に完投させた。一転、中国地区大会では2戦目の準々決勝から決勝までの3試合を花田―秋山の投手リレーで3連続1点差勝利。安定感ある投手陣と堅守、多彩な攻撃に伝統の足技も絡めて、初めて秋の中国地区で頂点に立った。 センバツ出場を確実にして過ごした冬場は、基礎体力の向上に時間をかけた。3カ月ほど見なかった間に、どの選手も下半身がどっしりしてきた。いかに走り込んできたか想像できる。特に花田。打線の中心でもあり、これまで打者としての練習にも時間を割いてきたが、この冬は投手としてのトレーニングに注力した。実戦形式の紅白戦でいきなり139キロ、1週間後には140キロ超えを連発している。甲子園では140キロ後半のスピードをたたき出しそうだ。秋山も相変わらず初球からキレの良い球を投げ、安定感が漂う。 悩みは打線。各選手とも力を付け、1番と4番以外は打順が流動的。守備力を考慮しながら打線を組んでいくであろう。 センバツは、大会第4日の第3試合で上田西(長野)と対戦する。同じような粘り強いチームで、公式戦12試合連続2桁安打の打線を持つと聞く。練習試合をしているものの久しぶりの公式戦。広島新庄らしいスキのない試合運びを期待する。勝てば、智弁学園(奈良)と大阪桐蔭(大阪)との勝者との対戦。これまた、楽しみな試合になると、今から期待を膨らませている。(敬称略)