福井女子中学生殺人、前川彰司さんの再審開始2度目の決定 名古屋高裁金沢支部「供述の誘導など不当な働きかけ疑い払拭できず」
1986年に福井県福井市で起きた女子中学生殺人事件を巡り、殺人罪で有罪が確定し服役した同市の前川彰司さん(59)が冤罪(えんざい)を主張して申し立てていた第2次再審請求で、名古屋高裁金沢支部(山田耕司裁判長)は23日、裁判をやり直す再審開始を認める決定をした。確定判決の根拠となった「血を付けた前川さんを見た」などの関係者供述について、「捜査に行き詰まった捜査機関が供述の誘導などの不当な働きかけを行って形成された疑いが払拭できず信用できない」と結論付けた。前川さんの再審が認められたのは2011年11月の同支部決定に続き2度目。 検察側が28日までに異議を申し立てなければ決定が確定し、同支部で裁判がやり直される。 第2次再審請求審では、検察側が、県警が前川さんの知人らを取り調べしたときに作成した捜査報告メモなど計287点の証拠を開示した。証拠を精査した弁護側は、関係者の供述変遷には合理性が欠如しているなどとする心理学鑑定書や、供述との矛盾を示す血液反応に関する鑑定結果など計133点を新証拠として提出した。 ■前川彰司さんのコメント 前川彰司さんの話 まだ浮かれるわけにはいかないが、とりあえず良かった。父に電話して知らせたい。 ■福井・女子中学生殺人事件とは 1986年3月19日夜、福井市の市営団地で中学3年の女子生徒が刃物で刺殺された。県警は87年3月、殺人容疑で前川彰司さんを逮捕。物証がなく、関係者供述の信用性が争われた一審で福井地裁は90年、供述は変遷し信用できないとして無罪判決を言い渡したが、二審名古屋高裁金沢支部は95年、「供述の核心は大筋一致している」と懲役7年の逆転有罪判決を出した。最高裁は97年に上告を棄却、異議申し立ても退け有罪判決が確定した。 前川さんは2003年に満期出所し、04年に再審請求。名古屋高裁金沢支部は11年に再審開始を決定したが、検察側の異議申し立てを受けた名古屋高裁が13年、決定を取り消した。最高裁は14年、前川さんの特別抗告を棄却、再審開始を認めない判断が確定した。前川さんは22年10月、第2次再審請求をした。
福井新聞社