裏金処分3つの疑問 政治部官邸キャップ解説
日テレNEWS NNN
裏金問題の処分の調整が大詰めです。自民党は不記載額が500万円以上のおよそ40人を対象とする方向で調整しています。この処分をめぐる3つの疑問について、政治部の平本典昭官邸キャップと伝えていきたいと思います。 ◇ 3つのギモン 1:なぜ?2番目重い「離党勧告」 2:対象40人…処分なし“裏金議員”も 3:処分内容の矛盾…新たな火種 1:なぜ?2番目重い「離党勧告」 ──まずは、一部の安倍派幹部に「離党勧告」を出す方向になった理由はなぜなんでしょうか? 実は当初、もう少し軽い処分で調整が進んでいたんです。それが先週の先月29日、岸田首相、麻生副総裁、茂木幹事長の3者会談で変わったようなんです。 ──どう変わったんですか? 党則に基づく処分 1:除名 2:離党勧告 3:党員資格停止(※当初検討 一部の安倍派幹部) 4:選挙での非公認 5:国会等の役職 辞任勧告 6:党の役職停止 7:戒告 8:党則遵守の勧告 自民党の処分は8段階。当初は3番目に重い「党員資格停止」処分などが検討されていました。これが、1ランクあがって「離党勧告」に重くなった、と。ある政権幹部はこの会議で岸田首相が「世論が厳しい処分を求めている」という姿勢を示した、と話しています。 ──今回処分を決めるにあたって目安になったものはあるんですか? 取材していてよく聞いたのは3年前のコロナ禍で、銀座のクラブに行っていた議員への「離党勧告」処分です。自民党内からもある閣僚経験者は「銀座の飲み歩きより裏金の方が悪質」として最低でも「離党勧告」処分という声は出ていた。一方で党内には「コロナ禍」と「裏金」を「一概に比べられない」という声もありましたが最後は厳しい処分となる見通しです。 岸田首相も周辺に「銀座の飲み歩きより裏金の方が悪くないのかと思われたら、処分が甘いと見られてしまう」と話しています。 2:対象40人…処分なし“裏金議員”も ──2つめの疑問です。不記載の議員82人のうち残りのおよそ40人は「お咎めなし」ということですか? いま、その方向です。処分なしで幹事長からの「注意」に止まる見通しです。 500万円で線を引き、それ以下は処分なしの方向となっています。政権幹部も「全員処罰する必要はない」と話している。 ──裏金という点では1万円であっても処分されないのはおかしいと感じる人もいると思いますが、500万円というラインは何を根拠に引いたんでしょうか? その根拠は取材していますが、まだよく見えてきていません。 ただ、金額でラインを引く方針に対して、安倍派の議員からでさえ「金額で引くのはおかしい。岸田総理が聴取をした意味がない」という厳しい声も出ています。 また、500万円以下で処分を免れそうな議員の1人は「むしろ処分してほしい。そうでないと地元で説明がつかない」と「処分なし」は「ありがた迷惑」といった声も聞きます。 ──岸田派も元会計責任者が立件されました。岸田派元トップの岸田首相の処分はどうなるんでしょうか? こちらは、見送られる方向です。岸田首相自身が安倍派と岸田派では悪質性の「次元が違う」と説明しています。 ただ、ある自民党幹部は「最後までわからない。本人次第」とも話しています。 というのも、これまで岸田首相は「岸田派の解散」「政倫審への出席」など、自ら動く形で難局を乗り越えてきました。今回も、党総裁として自分で自分を処分するという岸田流サプライズがあるのではないかという見方はくすぶっています。 3:処分決定で“新たな火種” ──最後、「処分決定で“新たな火種”」ということですがこちらはどうでしょうか。 自民党は今週4日に党紀委員会を開いて処分を決めたい考えです。一番難しいのは安倍派幹部7人の処分のラインをどう引くかです。 現時点で執行部は責任が重い安倍派幹部を「離党勧告処分」。次に「党員資格停止」「非公認」などとする方針ですが、線引きが非常に難しい。もう1つは「500万」にラインを引くことに反発は出ないか。 岸田首相は「世論」「自民党」2つバランスを考えていると思います。 まずは「世論の支持」です。支持率がさらに下がれば政権運営は行き詰まってしまいます。一方9月には総裁選が控えています。再選には「自民党議員の支持」が必要です。 永田町の論理を優先し処分を軽くすれば世論の反発を生む。処分を重くすれば党内の反発を買う。岸田首相は周辺に「みんなが納得する処分は到底できない」と話しているようです。難しい判断が迫られています。