韓国で国論を二分する歴史教科書の国定化 何が背景なのか?
韓国の教科書国定化が復活することになりました。17年春から中学と高校の歴史教科書が国定のものに一本化されます。この決定には、野党政治家や学者らを中心に異論が起こり、韓国世論も二分されているようです。朴槿恵(パク・クネ)大統領はなぜ歴史教科書の国定化に踏み切ったのか。「コリアレポート」編集長の辺真一氏が解説します。 【図】韓国の朴槿恵大統領が反日的な4つの理由
ソウルで10万人規模のデモが起こる
韓国では中学・高校の歴史教科書の国定化をめぐって国論が分裂しています。与野党は賛否をめぐり激しく対立し、今月14日には首都・ソウルで10万人規模(警察発表6万4000人)のデモがありました。米国産牛肉輸入に反対した2008年のデモ以来、最大規模となりました。この教科書国定化問題が引き金となっています。 韓国ギャラップの世論調査(11月6日発表)によれば、「反対」(53%)が「賛成」(36%)を上回っています。そのため8月には49%あった朴大統領の支持率も40%と落ち込みました。加えて朴政権の国定化方針には外国からも批判の声が起きています。 米ニューヨークタイムズ紙が社説(11月19日付)で取り上げ、米シカゴ大のブルース・カミングス教授やエール大のジョン・トリート教授ら海外の大学で韓国史を研究している著名な教授ら154人が連名で国定化に懸念を示す声明を出しています。
なぜ国定化を強行しようとする?
朴大統領は「国民統合のためには正しく、誇らしい歴史教科書が必要だ」と説明しています。現在の検定制の下で採用されている民間出版社の歴史教科書は「正しくなく、誇らしくない」との考えているようです。また、国定化を告示した黄教安首相は国民向け談話(11月3日)で「これ以上歪曲された歴史教科書で我々の大切な子どもたちを学ばせることはできない」と、今の教科書は「歪曲されている」と断定していました。 さらに「現行教科書は売国的教科書である」とみなす与党セヌリ党の金武星代表にいたっては「中・高校の教科書には左派的な反韓国史観が書かれている」として、その結果「今、韓国は左翼偏向の歴史病に罹っている」と嘆いています。金代表によれば、それもこれも「韓国の歴史学者90%が左派である」ことが原因とのことです。