<センバツへの道・鳴門>/中 初戦敗退当日に新チーム始動 悔しさ糧に猛練習 /徳島
2021年7月17日にあった全国高校野球選手権徳島大会で初戦敗退した鳴門は、その日のうちに新チームを始動させた。森脇稔監督(60)の下では前例が無かったが、選手の気持ちを引き締めようと踏み切った。 旧チームでレギュラーを務めた2年が多く残り、悔しさを晴らそうと一丸となって練習に取り組んだ。メニューの中心は打撃。選手たちが「終わりがないような気がして、精神的にきつかった」と振り返るのは、6秒ごとの笛で一斉に行う素振りだ。普段は多くて1日300回だが、夏休み中のノルマは倍の600回。通しで振ると1時間かかる。手の皮がむけて血がにじんだが、猛暑の中、懸命に振り続けた。 成果は8月、練習試合で現れた。5日に済美(愛媛)を7-4で破ると、7日には広島商(広島)を21-0、8日には市和歌山(和歌山)を6-1で降すなど、8月中旬までに県内外の強豪から12勝を挙げた。由谷豪太良(こうたろう)選手(2年)は「きつかった素振りは自信につながった。練習試合の度に自分たちのパフォーマンスが上がっていくのを感じ、チームの雰囲気も良かった」と当時の手応えを話す。 一方、左腕エースの冨田遼弥投手(2年)は、投球フォームの修正に取り組んだ。済美戦では、前半に失点。徳島大会前から課題だった、体の横から腕を振る癖が直っていなかった。球威が落ち、打者から見やすい球になっていた。 降板後、北谷雄一部長(45)がつきっきりで指導。左腕を後ろに振りすぎ、右足の着地のタイミングとずれている点などを指摘され、シャドーピッチングで理想的なフォームを反復した。「絶対にセンバツに行く」。気合を込めて体に覚え込ませ、2日後の広島商戦を完封した。土肥憲将(けんしょう)捕手(2年)は「直球だけでなくスライダーもキレが良くなり、曲がり幅が大きくなった。驚いたが、受けていて楽しかった」。 そして9月に迎えた秋の県大会。鳴門は準決勝までの3試合全てで五回コールド勝ちと、圧倒的な強さを見せる。10月3日の決勝では、同じくコールド勝ちを重ねてきた徳島商に対し、初回から3点を奪う猛攻を仕掛けた。計16安打を放ち、9-2で快勝。試合終了の瞬間、冨田投手が外野に向かって両手を挙げて叫ぶと、ナインはマウンドに駆け寄って喜びを爆発させた。 秋の県大会全4試合のチーム打率は4割3分9厘。無失策と堅守も光った。守備や走塁を指導する住友健人(はやと)コーチ(47)は、「過去10年、大会を通じての失策ゼロはなかった」と話す。塁間ですばやく送球する「ボール回し」の練習では、徳島大会直後は10周に1分以上を要したが、秋の県大会直前は58秒に縮まっていた。冨田投手の好投に加え、地道な守備練習が実を結んだ結果だった。 夏の敗戦を糧につかんだ勝利。森脇監督は試合後、表情を和らげる一方で「スコアだけ見れば圧倒的だが、走塁一つにしても、まだまだ雑なところがあった。全体的に詰めていかないといけない」と述べた。3週間後、鳴門は2年連続24回目となる四国大会に挑んだ。【国本ようこ】