防衛装備移転三原則の運用 「どのような原則をつくるか」を真剣に議論するべき
国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が12月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自衛隊が保有する「パトリオット」のアメリカ輸出について語った。
自衛隊保有の「パトリオット」、アメリカ輸出へ
飯田)自衛隊保有の「パトリオット」がアメリカに輸出される方針です。防衛装備移転三原則の改正により、ライセンス生産を日本国内で行っているものに関しては、輸出できるようになったのでしょうか? 神保)12月22日に防衛装備移転三原則の運用指針が改正されました。ライセンス生産ですので、外国から技術を導入して国内で生産される装備品です。もともと部品は可能だったのですが、今回、完成品の輸出も可能になりました。
2022年の段階で実は日本保有のパトリオットが足りていなかった
神保)最初の輸出がパトリオットミサイルになりましたが、面白いことに、日本の防空において去年(2022年)、防衛省は「パトリオットが足りない」と言っていたのです。まだ所要の6割ぐらいしかないから、「新しい防衛費で整備しなくてはいけない」と言っていたのですが、「今回それを輸出するのかよ」と思いました。
余剰分をウクライナ及び周辺国に輸出し、同盟国全体でウクライナを支援する
神保)もちろん、これにはウクライナ情勢が深く絡んでいます。重要なウクライナの防空においてパトリオットが活躍しているので、在庫をしっかり確保し、余剰分をウクライナ及び周辺国に出せるような形を取る必要があります。「同盟国全体でウクライナを支援する」ということだと思います。 飯田)アメリカが持っていたものを、ウクライナないし周辺国に渡して、在庫が厳しくなったら日本が補助するようなイメージですか?
「戦闘中の国をどこまで支援できるか」ということは何段階も続く議論
神保)そうですね。これが第1弾で、第2弾としては来年(2024年)の初頭ぐらいに、周辺国のポーランドなどへの輸出が検討される可能性もあります。また、実際に戦闘が行われている国に対して「どこまで支援できるか」という議論もありますが、これは何段階も続く議論になると思います。 飯田)パトリオットは地対空ミサイルシステムですが、基本的には「飛んできたものを撃ち落とす」という防御的なものですよね? 神保)そうですね。ただ、ミサイルが飛んでくればミサイル防衛になるのですが、総合的な防空システムですから、戦闘機や航空機を撃ち落とすシステムとしても有用です。輸出するのはPAC3だけではなく、PAC2も含むようなので、「総合的な防空システムを外に出す」ということです。