【深圳の男児刺殺事件】前駐中国大使・垂秀夫氏「居直った対応、放置するな」
中国広東省深圳で日本人学校に登校中の10歳男児が刺殺された事件を巡り、背景にある中国側の課題について、前駐中国大使で立命館大の垂(たるみ)秀夫教授に聞いた。 【写真】亡くなった男児が通っていた深圳日本人学校の校門前に手向けられた花束=19日午後、中国広東省深圳 深圳日本人学校は2023年5月に訪れたことがあり、胸が張り裂けそうで、強い憤りを覚えている。 中国吉林省でも6月、米国の大学教員4人が刃物で刺され負傷した事件があった。「偶発的な事件」と説明する中国政府に対し、米国の駐中国大使は「透明性の欠如に不満を抱いている」と、捜査や情報開示の在り方を批判した。このような事件が発生した場合、中国側は常に個別の事案で片付けようとするが、こうした居直った対応を放置せず、米国のように強く訴える必要がある。 事件の背景として、経済成長の鈍化などによる社会の閉塞(へいそく)感が指摘されることがある。それ自身は正しいが、それだけでは今回の事件は説明できない。トリガー(引き金)となったのは、「137校(実際は11校)も存在する日本人学校は治外法権であり、対中工作のスパイが養成されている」など、日本人学校に関する悪意や誤解に満ちた交流サイト(SNS)にある数百本に上る動画だろう。私も大使時代、これらの削除を何度も申し入れてきたが、中国政府は対処してこなかった。一昔前、中国では抗日ドラマが流行していたが、今それに代わるのが反日動画、とりわけ日本人学校関係である。これを削除させていかないと、同じような事件が繰り返される恐れがあり、強く懸念している。 (聞き手は竹次稔)
西日本新聞