森保ジャパン“落選組”の復帰は?…動向次第で「しばらくチャンスない」可能性ある面々も【コラム】
GKは6月シリーズで序列が変わる可能性あり
浅野は森保監督の「お気に入り」と思われてもいい存在だ。2013年から2016年までのサンフレッチェ広島時代に森保監督の指導を受け、日本代表でもピンチになると投入されてきた。そして2021年10月12日、W杯アジア最終予選のオーストラリア戦であとがなくなった日本を救うオウンゴールのきっかけとなり、2022年のカタールW杯では初戦でドイツを破る決勝点を叩き込むなど期待に応えている。 2023-24シーズンは29試合に出場し、6得点を挙げた。だが5月31日に発表されたボーフムの退団リストの中に浅野の名前があり、このオフは移籍先を決定しなければならない。その点を考慮し、今回は浅野を招集しなかったと考えていいだろう。新天地が決まれば日本代表に戻ってくるのは間違いない。 毎熊は2023年9月に日本代表に選出されて以来、森保監督が重用してきた選手だ。2024年1月のアジアカップでは調子の上がらない菅原由勢(AZアルクマール/オランダ)に代わってプレーすると、4試合に出場。ラウンド16のバーレーン戦では前半32分、ミドルシュートから堂安律(フライブルク/ドイツ)の先制点のきっかけを生んだ。 今シーズンはここまでのリーグ戦16試合のうち14試合に出場している。もっとも5月6日のガンバ大阪戦で右足ハムストリングを痛めて後半12分に交代した。5月18日のアビスパ福岡戦では途中出場して復帰し、5月26日の広島戦ではフル出場したものの、万全ではないと思われる。そのため、今回は橋岡大樹(ルートン・タウン/イングランド)が選ばれたと言えるだろう。もっとも、これで橋岡の出来が良ければ、序列が変わるかもしれない。 佐野は2023年11月、伊藤敦樹(浦和レッズ)が怪我で代表を辞退し、代わりに初招集された。それまで世代別代表も含めて未選出だった選手は、11月16日のミャンマー戦で出場すると、そのまま2024年アジアカップのメンバー入りする。そして初戦のベトナム戦では後半32分から、3戦目のインドネシア戦では後半37分から出場した。 今シーズンのリーグ戦では16試合中15試合に出場し、落ち着いたプレーを見せており、第16節を終了した時点でチームは2位。ただし、佐野のポジションは代表の中でも激戦区だ。 遠藤航(リバプール/イングランド)、守田英正(スポルティング/ポルトガル)、田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)に加え、鎌田大地(ラツィオ/イタリア)も高いレベルでこなすことができる。また、今回選出されている川村拓夢はボランチをこなせる選手の中での唯一の左利き。そう考えると、佐野はここから強烈なインパクトを残して日本代表に残っていかなければならない。 最後に鈴木だが、GKは現在の日本代表において唯一、頭が抜け出した選手のいないポジションだ。今回選ばれている選手が傑出したパフォーマンスを見せれば、森保監督はあっさり優先順位を変えるだろう。また、U-23アジアカップで活躍した小久保玲央ブライアン(ベンフィカ/ポルトガル)が代わって選ばれる可能性もある。 このように詳細に考えていくと、日本代表に復帰しそうなのは浅野、負傷者があれば呼ばれる可能性のあるのが渡辺、あとの3人はほかの選手の出来次第では、しばらくチャンスがないかもしれない。 森保監督は今回外れた選手について「代表の戦力には今後もなっていく選手だとは思っていますし、それだけ能力が高い選手という評価もしています」と語ってはいる。だが、額面どおりに受け取っていいものだろうか。「去る者は日に以て疎く、来たる者は日に以て親しむ」と言うが、日本代表においてメンバーから外れるというのは「日々」という言葉よりも厳しく関係が薄くなることもあるのだ。 [著者プロフィール] 森雅史(もり・まさふみ)/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。
森雅史 / Masafumi Mori