「女性として生きていきたい」40代夫の願いが両親にも職場にもすんなり受け入れられ妻だけが襲われた孤独
■在職しながらの性別移行が許される 職場側との話し合いも、夫の予想以上に良いものだったそうです。 実は既に社内には性的少数者が複数人いることを会社側でも把握しており、内訳としては「LGB(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル)」の人が多めで「T(トランスジェンダー)」も数人いる。 ただどなたも人事部に伝えたのみで何か行動に移している人はおらず、職場では通常と変わらずに業務に当たっている。 在職トランスまでした人はまだいない、とのこと。 でもちょうどこれからダイバーシティ推進部を作ろうとしていたところなので、むしろ会社としても渡りに船のタイミングであり、ぜひプロジェクトに意見してくれ、と言われたとのことでした。 夫も知らなかったことですが、既に社内には何人も「LGBT」に当たる方たちはいたということです。 ですがその誰もが公にすることはなく、ひっそりと溶け込んで仕事をしていたようです。特に「LGB」の方は周りに公言せずとも仕事や生活に支障は出ないことが多いですしね。 夫の会社はマスコミ業なので社風も堅くなく、会社のイメージアップのためにもダイバーシティを推進しようとしていたところでした。 在職トランスに苦労する当事者も多いなか、まさかのウェルカムな雰囲気の中で夫は在職トランス1号となっていきました。 時代と会社の流れに見事に乗っていった夫に、私はあっけにとられるしかありませんでした。 ■最難関の母は「女性になろうが構わない」と言った 最後の関門は夫の母でした。夫の母は感情が激高しやすく、何かあるとすぐパニックになってしまうため、カミングアウトをしたら大変なことになるのではと、家族全員が心配していたのです。 ですがこの時期、夫の母は急激に老け込み、耳もかなり遠くなっていました。なのに補聴器を付けたがらないので会話自体がほとんど成り立ちません。そして以前のような元気もないので、激高することもほとんどなくなっていました。 元々息子を溺愛していた母親でしたので、「会いに来てくれただけでうれしい。女性になろうが何でも構わない」と言われ、ウソのように平和に終わったそうです。 会話がほとんど成り立っていないので、あまり事態が分かっていなかった可能性もあったように思います。