なぜこうも複雑なのか 『ガンダムW』ウイングガンダムゼロのややこしい設定を紐解く
TV版そっくりな「プロトタイプ」
さらに、2010年より「ガンダムエース」誌に連載されたマンガ作品『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 敗者たちの栄光』(シナリオ:隅沢克之/漫画:小笠原智史/原作:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)には、EW版の改修前の機体として「ウイングガンダムプロトゼロ」が登場し、設定がややこしくなります。『敗者たちの栄光』はTVシリーズの時系列で起きた戦いをOVAの世界観でリメイクした作品で、プロトゼロのような新機体も登場しました。 そのプロトゼロも、EW版と同じくTV版を再デザインした機体ではあるものの、大胆に変わったEW版に対し、プロトゼロはTV版の面影を残したもので、細部が変更されているに留まります。作中の扱いでは、プロトゼロとして登場し、途中で大破したためEW版に改修された、ということになっていました。プロトゼロの登場でEW版は、本当の意味で「ウイングガンダムゼロカスタム」になった、といえるのかもしれません。 しかし、見た目がTV版に近いプロトゼロの改修型がEW版だとすると、EW版とプロトゼロのどちらがTV版ウイングガンダムゼロと同じ機体なのか、という疑問もわいてきます。察するに「TV版と同じ」は見た目の違いが混乱を招かないようにするための方便で、立ち位置としてEW版とTV版を同じとする説が正解に近い気がします。 どうしてそんなことになったのか、一概に答えは出せませんが、「作品や機体の人気の高さから、作品の展開が続いたこと」は影響していそうです。冒頭で触れた「発表!全ガンダム大投票」の「モビルスーツ(メカ)部門」でウイングガンダムゼロは32位、ウイングガンダムゼロ(EW版)は5位でした。それだけでなく「アニメ作品部門」においても『ガンダムW』は40作品中の9位と、なかなかの高順位を獲得しています。 そうした結果もあってか、『ガンダムW』を含めたオルタナティブ作品(『G』『X』)の、30周年を記念した企画も立ち上がっています。はたしてウイングガンダムゼロに、さらなる新たな設定が増えることはあるのでしょうか、今後の展開を楽しみに待ちましょう。
LUIS FIELD