ロシア・プーチン大統領 5期目で聞こえ始めた絶対王国「内部崩壊の足音」
20年近くにわたり、ロシアの最高権力者の座に就く″皇帝″の足元がついに揺らぎ始めている――。 【画像】母親は「大統領の精子を全てのロシア人女性に」と驚愕発言…プーチン「噂される新恋人」 ロシアのプーチン大統領(71)が通算5期目となる内閣を発足させたのは5月14日のこと。そのわずか2日後には、親友と呼び合う習近平国家主席(70)の待つ中国を訪問。世界に蜜月ぶりを改めてアピールした。 だが、この″スピード訪中″は「プーチン大統領の焦りの表れ」だと防衛省防衛研究所研究幹事の兵頭慎治氏は見る。 「中国は長期化しているウクライナとの戦争を続けるための命綱となっている。中国をつなぎとめるために、組閣後に慌てて訪中したというのが実情でしょう」 国境を接する両国。戦略的に背後をとられたくないロシアにとって同盟関係は不可欠だ。そして経済的にも中国は重要なパートナーとなっている。NATO諸国の経済制裁により、兵器の製造に必要不可欠な半導体などの電子部品をロシアは中国からの輸入に頼らざるをえないからだ。ドローンをはじめとした軍事と民生の双方で活用できる「デュアルユース品」の輸入も昨年は実に89%が中国からだった。元産経新聞モスクワ支局長で、大和大学教授の佐々木正明氏が語る。 「昨年の中ロ貿易額は約37兆円で、これはロシアの貿易額全体の約3割を占めています。しかし、中国にとってロシアとの貿易額は全体の4%にすぎず、両国は決して対等な関係とは言えない。ロシアの中国依存が顕著になっています」 現在のロシア経済の一番の不安要素は、国家歳入の20%近くを占める国営の天然ガス会社・ガスプロムが大幅な赤字を出していることだ。そしてここでも中ロの立場の差が明らかになっている。 「欧米に天然ガスを輸出できなくなった影響が大きく、昨年12月の決算でガスプロムの赤字額は約1兆800億円にも上りました。現在、最大の販売先は中国ですが、中国がロシアから購入している天然ガスの価格は、国際標準価格から46%も値引かれた額なのです」(筑波大学名誉教授の中村逸郎氏) ◆富裕層の支持が危機的に それでも中国との不平等な貿易を続けなければいけないのは、プーチン政権が「経済破綻からの国家崩壊」を恐れているためだ。’90年に国家予算の約3割を国防費に充てたため、生活物資の供給が滞るなど経済政策が失敗して崩壊したソ連の二の舞は避けたいというプーチン大統領の意思が隠れている。 現在、ロシアはソ連末期と同じく国家予算の約3割が国防費に充てられているが、「組閣人事から、経済死守の意図と戦争長期化の覚悟が読み取れる」と慶應義塾大学教授の廣瀬陽子氏は言う。 「国防相を12年間務めたショイグ氏を交代させ、経済学者のベロウソフ氏を抜擢しました。軍事に充てる予算を効率化させるためでしょう。経済破綻を防ぎつつ、いかに戦争を継続するかを考えなければいけない局面を迎えているのです」 直面するのは、経済問題だけではない。3月22日に首都・モスクワ郊外で発生し、145人が犠牲となったテロへの対応を巡り、民衆の不信感が募っているのだ。 「テロの実行犯とされる過激派組織『イスラム国』は3月上旬からモスクワで準備を始めていました。その動きを察知したアメリカ政府はロシアに対して警告しましたが、プーチン政権は『陰謀だ』と取り合わなかった。テロ発生後もプーチン大統領は事実上、イスラム国の関与を否定し、ウクライナの犯行を示唆する声明を出しています。治安面の失策すらもウクライナの攻撃に結びつける姿勢を民衆は疑問視しています」(前出・佐々木氏) ロシアの発展に貢献してきた富裕層・オリガルヒからも見放される可能性が出てきた。前出の中村氏が続ける。 「現在、オリガルヒがロシア国外で所有している資産が凍結されています。6月にイタリアで予定されているG7サミットでは、この資産を売却しウクライナの復興に充てる案が検討される見通しです。これが採択されれば、さらなる求心力低下は避けられない。開戦以来、オリガルヒや将来の経済、政治を担うはずだったエリートの国外脱出に歯止めがかかっていません。人材不足で今後の政権運営が困難になることも危惧されています」 強まる中国への依存と、国内に募る不満。プーチン大統領が、強行した戦争のツケを払う時が近づいている。 『FRIDAY』2024年6月7・14日号より
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