[MOM4903]履正社GK新宮尋大(1年)_「苦手」なPK戦でヒーローに!! 先輩のアドバイスも参考に2本ストップで決勝へと導く
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.4 選手権大阪府予選準決勝 興國高 1-1(PK3-4) 履正社高 ヨドコウ桜スタジアム] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 「めちゃくちゃ苦手」と口にするPK戦で読みを的中させ、決勝進出のヒーローとなったのは履正社高のGK新宮尋大(1年)だった。 試合の入りは決して良かったとは言えない。試合開始とともに3バックの脇を突かれて、ゴール前へのクロスが何本も上がっていた。「最初は相手がクロスを入れてきた。1本、2本は跳ね返せていたのですが、このままだといつかやられるなと思っていた」という新宮の不安は的中。前半6分には自陣の右を崩されると、ファーサイドでFW久松大燿(3年)が合わせたシュートが味方に当たってオウンゴールとなった。 出足で躓く格好となったが、新宮に動揺は見られない。「少し焦ったのですが、失点の形は枠外だったシュートが味方に当たって入った形。マインド的には枠外だったので“失点していない”という気持ちでプレーした方が、後半に繋がると思った。あまり気にしなかった」。 失点後はサイドのスペースをケアするため、システムを4バックに変更。新宮自身も2失点目を与えないようにDFラインと声を掛け合いながら後ろを固めたという。前半半ばからは履正社が主導権を握れたため、相手に自陣まで持ち込まれる場面が減った。攻め込まれても枠内シュートはごくわずか。枠内に跳んできてもDFがしっかり対応していたため、勢いのあるシュートも少なかった。 後半に入ってからも相手陣内での時間が続き、後半24分にはFW兼原然(3年)が同点のPKを成功。延長戦でも決着が付かずにPK戦を迎え、新宮の見せ場が訪れた。「PK戦はGKにとっての見せどころ。試合では何もできなかったので、ここで仕事をしようと思っていた」。そう振り返る新宮は自らの気持ちを上げるため、PK戦に挑む前はスタンドを煽っていたが、内心は一切防げる気がしなかったという。 中学時代はPKを得意にしていたが、高校に入ってからはキッカーに逆を突かれることが多く、苦手意識が強まっていた。前日に行なったPK練習で止めたのも0本。しかも、ほとんどコースも合っていなかったという。「新宮がPK練習で止めている姿を見たことがない。僕たちもベンチで、新宮が止めることはないから、外してもらうしかないみたいな感じで話していた」。そう打ち明けるのは主将のDF仲井陽琉(3年)だ。 ただ、苦手にしているからよく考えてPK戦に挑んだ側面はある。控えのGK柴原雄生(3年)のアドバイスを参考にしながら、相手の特徴をよく分析していた。「興國は蹴る前にコースを見てくるタイプで、弾丸系のシュートはない。見てくるタイプなら、なるべく我慢して、蹴ってから跳んでも良いかなと思っていた」と1本目は実験的に少し遅れたセービングにトライ。以降はタイミングを微調整した結果が左に跳んで防いだ相手4人目のセービングに繋がった。 続く5人目は、キッカーがボールを置いた瞬間にコースが分かったという。「1本止めているし、スコアもドローだったので、先に読んで外れても良いやという気持ちで跳びました」と右に跳んだ結果、見事に読みが的中。続く後攻・履正社のキッカーが成功し、勝利が確定した。 武器は安定したセービングと1対1の守備対応。177cmながらも、入学直後から定位置を掴んだ通り、GKとしての能力は高いが、サッカー選手としてのキャリアはまだ浅い。小学5年生になるまでは、たまにボールを蹴るぐらいでサッカーとは無縁だったが、キーパーグローブに憧れてGKとしてサッカーを始めた。「サッカーは難しいけど、シュートを止めるのは楽しい」とすぐさまGKというポジションの虜になった少年は、憧れのガンバ大阪のGK東口順昭を参考にスクスクと成長していった。 1年目から出場機会を重ねた経験は大きく、大舞台であっても動じないメンタルも身に付けている。よりプレッシャーのかかる決勝でも再びヒーローになる予感が漂う。「PKを狙っていてもだめなので、無失点を目指したい。まずは80分でしっかり決めきることを意識したい」。そう意気込む守護神の活躍は、まだこれからも続く。 (取材・文 森田将義)