外国人の日本語弁論大会 最高賞「外務大臣賞」などW受賞 「おぼらだれん」を込めて 鹿児島県・徳之島町CIRのクリストファーさん
【鹿児島県・徳之島】第63回「外国人による日本語弁論大会」(一般財団・国際教育振興会など主催)が19日、神奈川県小田原市であった。徳之島町役場在籍のCIR(国際交流員)のリナルディ・クリストファーさん(27)=米・ニューヨーク市出身=が最高賞「外務大臣賞」と「会場審査員賞」をダブル受賞した。ニューヨーカーが魅せられた情熱の島・徳之島の魅力を「おぼらだれん」と題して発表し、絶賛を浴びた。 同弁論大会は、国籍や文化の違いを越えて建設的な意見交換を行い一層の相互理解、人類の平和共存・発展などを目的に1960年から毎年開催。今回は新型コロナウイルスの影響で3年ぶりとなった。 予選審査には全国から約100人が応募し、スピーチ原稿とスピーチ録画映像を審査。本大会には徳之島町のクリストファーさんら12人を選考した。応募者の日本語能力が年々向上する中、それぞれが見て感じた思いを日本語で訴えた。 クリストファ―さんはJETプログラム(外国青年招致事業)で2022年8月から同町CIRに派遣。日本語弁論の発表題「おぼらだれん」は島口(方言)で「ありがとう」。発表では「もともとはニューヨーカーだが今は島人。人口わずか2万人余の小さな島ですが、伝統的な闘牛が盛んで、生命力が漲(みなぎ)っている灼(しゃく)熱の島。第二の故郷だと思っている大好きな島」と切り出した。 人々の親近感、3町が一つにまとまったコミュニティー、日常生活の中にある豊かな自然、太鼓の律動に合わせて島の人に交じって歌ったり踊ったりする「ワイド節」――。人・文化・自然の魅力など魅せられた島への思いをエッセーにつづって明快にアピールした。 そして「自然が大好きな僕にとって都会は寒くて暗い世界でした。南北東西そびえ立つ摩天楼に包囲されて、まさに井の中の蛙(かえる)のような生き方をしていました」とも述懐。「儚(はかな)いこの人生に本当に大事なのは、都会で忙しく競争するのじゃなくて、もっと簡単なもの。自然、家族、平和、そして感謝です」 都会で歯を食いしばって悩んでいた時期に対しても「おぼらだれん」。「皆さんも、人生のいろいろな葛藤と混沌(こんとん)の中で、無意識的に纏(まと)ってしまう精神的な鎧(よろい)を、徳之島のこの感謝の6文字が、優しく外してくれると僕は祈っています」(要旨)と結んだ。 町役場で高岡秀規町長が改めて賞を伝達して祝福。クリストファーさんは「日本人が『日本語が上手ですね』とか言ってくれるが、具体的な形(審査)で認められてうれしい。主催者側からは『司会をして、徳之島で大会自体をやれば』との話もいただいた」とも。 応援で本大会に足を運んでいた高岡町長は「外務大臣賞に加えて会場の全員が審査する会場審査員賞に驚き、クリストファーさんのスキルの高さを感じた」。CIRの全任期は5年間だが、「今後も徳之島に住んでいただけたらありがたい」と期待を寄せた。 ちなみにクリストファーさんの日本語歴は独学で始めて今年で約5年。ニューヨークにいて村上春樹の翻訳本や昭和歌謡に興味を持ち特に演歌、春日八郎の歌も好きになった。8月に伊仙町ほーらい館広場であった夏祭りカラオケ大会では、演歌「お岩木山」(三山ひろし)を熱唱して優勝し、並み居る演歌自慢たちを驚嘆させた。 同日本語弁論大会の模様はNHK・Eテレでも近く放送予定という。