職場からいきなり雇用契約書にサインを求められたけど、サインしていいの? 2024年4月、労働条件の明示方法が変わる……労働者ができる備えとは? 後編
「前編」(※1)に引き続き、2024年4月に改正が予定されている労働条件の明示方法について解説するとともに、パート・アルバイトが知っておくべくポイントをお話しします。 明示しなければならないのは会社だから、自分には関係ないと思われるかもしれませんが、労働者側にも備えは必要です。労働者側も明示された事項を確認し、不備があれば勤務先に説明が求められるような知識があれば、自分を守ることにもつながるのです。
有期雇用契約者が利用できる無期雇用転換制度
「無期転換ルール」という言葉を聞いたことはあるかもしれませんが、「この制度を使ったことがある」というのは筆者もあまり聞きません。ここで有期雇用労働者が利用できる無期転換ルールについておさらいをしておきましょう。 この無期転換ルールとは、同一の企業との間で有期雇用の労働契約が5年を超えて更新された時に、契約社員やパート(呼称は問いません)からの申し込みで、無期雇用の労働者になることができるという制度のことをいいます。 契約期間が毎年1年ごとに更新されている方でも、5回目の更新後の1年間に申込権が発生します。これは、労働契約法という法律に明記されている事項ですから、企業側が申し込みされた時には、断ることができません。 ただ、通算契約期間のリセット(いわゆる「クーリング」)はあり、6ヶ月以上(※2)契約期間がない場合には、再雇用することは可能です。また、この申し込み後、必ずしも労働条件を変える必要はありません。「有期」と期間を区切られていないことにより、次の職を探す必要がない雇用の安定にはつながるという点がメリットといえます。 (※2)無契約期間の前の通算契約期間により、1ヶ月から6ヶ月の幅あり
パートが確認しておくべき、更新するときのチェックポイント
パートとして働いているということは、子育てや介護など、フルタイムで就業できない何らかの理由があるケースもあり、パートの労働条件を最初から細かく決めるというのはなかなか難しいものです。とりあえず時給や労働日を記載した労働条件通知書をわたされることもあるでしょう。 当初しっかりと埋まっていないものを渡されたとしても、更新の都度、「空白部分はちゃんと埋まっているのか」「次回の更新条件は? 更新がそもそもあるのか」「通算契約期間の定めはあるのか」など、詳細が記載されているのかはしっかりと見ておきましょう。 パートの労働条件はついつい口約束になってしまうケースもあるかもしれませんが、「書面で確認する」習慣をつけておくといいでしょう。前段の無期雇用転換の申し込み機会が発生した時の明示についても、書面ですることが必要です。労働者の希望により、メールなどで明示することも可能ですが、いずれにせよ証拠が残る形式にする必要はあります。