琉球ゴールデンキングスに5年ぶりの復帰、佐々宜央の覚悟(後編)「ファンの皆さんと一緒に喜んで、お祭り騒ぎをしたい」
「ネガティブな雰囲気になっている時は率先してバカ騒ぎをしていきたいです」
「ネガティブな雰囲気になっている時は率先してバカ騒ぎをしていきたいです」 ――今回、役職はアソシエイトヘッドコーチですが、ヘッドコーチに対するこだわりはなかったですか。 それは全くないです。もちろんヘッドコーチをやりたいか、やりたくないか、と言われたらやりたいです。ただ、僕らの仕事は求められてなんぼです。今回、自分が必要とされていると強く感じられた。それは人生において幸せで、断るべきではないと思いました。 そして、これはBリーグの1つの課題かもしれないですが、ヘッドコーチを経験してアシスタントをやっている人はそんなに多くないと思います。キングスには、大阪エヴェッサでヘッドコーチ経験のある穂坂(健祐)コーチもいますが、ヘッドコーチをやった人だからこそ理解できる難しさはありますし、寄り添えるところはある。そこは経験者だからこその良さを出していきたい。良い会話とかで、少しでも桶さんが気持ちよくコーチングをできるようにサポートをしたいです。 ――オフに琉球は今村佳太選手など、複数の主力選手たちが移籍して過渡期に入っていると思います。まずは、どんな所でヘッドコーチをサポートしていきたいと考えています。 代表候補の今村選手、そして五輪に出場した渡邉飛勇選手が移籍して、力のあるないは別としても現状、代表に絡んでいる選手はいないです。そういうこともあって去年よりも難しいシーズンになるかもしれないですが、そういう状況だからこそ楽しいんじゃないの、という風に僕は思っています。また、昨シーズンは最終的にタイトルを何も取れなかった訳で、アンダードックの気持ちを持って臨まないといけない。3年連続ファイナルに行っているし、今シーズンもなんだかんだと行けるんじゃないか、という気持ちを持っている選手がいたらそれは本当に危ない。常に危機感を持ち、自分たちはチャレンジャーというメンタルを持ち続けられるチーム状況にしていくことが大事です。 まず、若手の面倒を見てあげてほしいと桶さんに言われています。特に荒川(颯)選手、植松(義也)選手、脇(真大)選手などになります。現時点で11名のロスターであることを考えると、彼らの活躍も絶対に必要で、自分も責任を持って彼らの成長を促していきます。そして、僕は基本的にふざけている奴なんで、苦しい時間帯とかチームがネガティブな雰囲気になっている時は率先してバカ騒ぎをしていきたいです。皆さんがオリンピックで見てくれたような感じを、キングスでも出していきたいです。メンタル面で悪い流れの時に「開き直って、みんなで元気にやっていくしかない」とチームを持っていけるような影響を及ぼしていきたいです。 ――佐々さん個人でいうと、代表のアシスタントとしてワールドカップ、オリンピックと2年続けて濃密な夏を過ごしました。活動期間は短いとはいえ、この3年間の代表はどういう期間でしたか。 夏の代表活動は実際1年の内2ヶ月くらいですけど、体感としては1シーズンを戦った感じです。パリオリンピックではフランス戦で勝ちきれず、目標のベスト8に届かなかったのは本当に悔しかったです。でも総体的に日本代表の選手は素晴らしい戦いを見せてくれました。そして、トム(ホーバス代表ヘッドコーチ)の下で、彼のチーム作りの過程を経験させてもらえたのは自分にとって本当に大きく、とても恵まれていると思います。ただ、だからこそ代表活動で得たものをどんどん外に出していかないといけない。こういう経験は時間が経つことで色褪せていくモノでもあるので。 「キングスに戻ってくることができて、僕はすごく感慨深いです」 ――佐々さんは今、40歳とコーチとしてはまだまだ若い年齢ですが、Bリーグでヘッドコーチを務め、コーチングスタッフとして優勝もしています。そして代表のコーチ歴も長いですし、早くもコーチとして一通り経験したような印象があります。今、コーチとしてどんなモチベーションがありますか。 おっしゃる通りで、コーチとして一周したと感じる部分はあり、特別な経験をさせてもらっていると思っています。そういう意味で、モチベーションは昔とは違うところもあります。キングスでヘッドコーチをやっていた時とかは、必死に知識を会得しないといけない、コーチとしての威厳とかを気にしていました。それが今は自分の経験を還元していかないといけない気持ちで、そのためにも勝ち続ける必要があると思っています。いくら経験があるといっても、在籍しているチームで結果を残せていなかったら信頼性が薄れてしまいます。ただ、当然ですが自分もまだまだ勉強しないといけない立場です。そしてコーチとしての1番のモチベーションは勝ちたい気持ちです。毎回、チーム練習が終わると、今日はこの選手に対しての指導をやりきれたのかと振り返ります。そういうところでの情熱はずっと変わっていないです。 ――いろいろな経験をしてきて、佐々さんは昔に比べて丸くなったという声を聞きます。この見方についての感想を聞きたいです。 正直、そう言われることに対してはうれしく思います。そういう見え方をされたり、指導方法ができるようになったことは成長かなと。5年前、キングスにいた時や未熟な時は、感情が表に出過ぎて、いわゆるキレてしまう状態でした。もちろん、怒りを前面に出して、ピリッとした雰囲気が必要な時もあります。ただ、コミュニケーションをもっと取れていれば、キレる必要がないのにそういう姿勢を出してしまったこともあったと思います。当時と情熱は全く変わっていないですけど、ソフトな伝え方もできるようになった。ピリピリしなくても目的を達成できるのであれば、余計なストレスを与えない方がいい状況もあります。なので、自分としてはポシティブな変化と解釈しています。 ――最後、キングスファンにメッセージをお願いします。 キングスに戻ってくることができて、僕はすごく感慨深いです。先ほども言ったように恩返しをしたいと気持ちでいっぱいです。そして、ファンの皆さんと一緒に喜んで、お祭り騒ぎをしたいと思っています。そういう場面が増えていくシーズンにしたいです。そして1つでも大きなタイトルを取って、皆さんと喜びを分ちあいたい。まずはプレシーズンで皆さんに会えるのを楽しみにしています。本当に、1年間よろしくお願いします。
バスケット・カウント編集部