夏の甲子園の“猛暑対策” 「朝夕二部制」導入に現場の声は? 一部の観客から「時間つぶしに金がかかる」と不満も
21時半過ぎまで試合が終わらず…
一方で、「二部制」の課題が見えたことも事実である。それは、大会初日の出来事だ。この日は開会式が行われたため、「夕方の部」に2試合を実施した。 第3試合の岐阜城北対智弁学園戦は、延長11回にもつれ込んだため、試合終了は21時36分、大会史上2番目に遅い時間となった。もちろん、両チームは8時半から行われた開会式に参加しており、それに合わせて早朝に起床している。そんな状況で、21時半過ぎまで試合をしていた。延長10回、11回にはエラーが続出したことも頷ける。 開会式後、一度宿舎に戻って仮眠をとるなどの対応をしていたそうだが、やはり、早朝の開会式とナイトゲームの両方をこなすには、選手の体に大きな負担がかかっていたようだ。来年以降、開会式の開催方法を変更するなど、検討の余地はあるのではないだろうか。 初戦の興南戦で勝利し、甲子園で監督通算70勝を達成した大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「二部制」について「何時からの試合でも、大勢の観客のいる素晴らしい場所で試合をさせてもらえるだけで嬉しいです」と話していた。周囲からは暑さ対策について心配する声が出ても、このように考えている関係者は多いのもしれない。 しかし、“大勢の観客”にとって、「二部制」が必ずしもプラスだったと言い切れない。「夕方の部」の最終試合が長引けば、甲子園に応援に来た保護者や生徒の帰宅が遅くなる。これは、前出の高橋監督も不安材料に挙げていた。
不満を口にする高校野球ファンも
さらに、一般の観客にも影響が及んだ。1日で複数の試合を観戦する観客は、「午前の部」と「夕方の部」の間に、球場から一度退場する必要があったからだ。長年、甲子園で観戦している高校野球ファンは、以下のように、不満を漏らしている。 「一度、球場を出ないといけない。これがつらいですよね。食事をするにしても、時間を潰すにしてもお金がかかる。チケット代も数年前からどんどん高くなっているので、負担が大きいです。それに、『午前の部』と『夕方の部』でチケットが異なります。別々に購入する必要があるから、それもかなり手間ですね……」 そういった影響もあってか、「夕方の部」の第3試合の観客数をみると、第1日と第2日が1万人、第3日が1万1000人と発表されている。確かに、スタンドは、かなり空席が目立っていた。「二部制」にかかわらず、禁止されている球場への再入場を認めるなど、改善する必要性がありそうだ。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部
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