「体操を辞めるかどうか…」宮田笙子が思いつめていた進退…監督が明かした“変化”「いろいろな人に配慮できるようになってきた」20歳の今後
9月に20歳の誕生日、拠点も変更していた
宮田は9月に佐賀県で開催された国民スポーツ大会に、高校時代を過ごした福井県の代表選手として出場。段違い平行棒を除く3種目で演技し、福井県の団体優勝に貢献した。そこには高校時代の恩師である鯖江高校の田野辺満監督の支えもあった。 その試合後、宮田は報道陣を前に発言を申し出て、頭を下げて決意を述べた。 「このたびは私が取った行動によってたくさんの皆さまにご迷惑をおかけしてしまい、深く反省しております。この件に対し真摯に向き合い、今後の競技生活を全うしてまいりたいと思います」 京都出身で高校時代の3年間を福井県立鯖江高校で過ごした宮田は2023年4月に順大に進学したが、パリ五輪までは順大と鯖江の2カ所を練習拠点として強化を続けてきた。順大は男子の活動がメインで、女子のトップ選手が集まるようになったのは昨年から。そのため、パリ五輪を見据える中、練習環境の変化に対するリスクを軽減するという意図を持ちながら鯖江高校で田野辺監督の指導も継続して受けてきた。 しかし、今夏を区切りに鯖江を完全に引き払い、拠点を順大に一本化する生活に切り替えた。中学時代から国際大会に出場するなど体操の経験は豊富だが、年齢的には9月に20歳の誕生日を迎えたばかりの大学2年生。今は独り立ちしていくスタート地点に立ったばかりとも言えるだろう。
宮田は「いろいろな人に配慮できるようになってきた」
順大の原田監督はこのように言う。 「宮田はいろいろあったことを自分の中で咀嚼して、解決して前に進もうとしているし、前に進むという決断をした頃から顔つきも変わってきたように見える。応援してくれている人、見に来てくれている人のために演技をしたいという気持ちが見える。考え方がポジティブというか、いろいろな人に配慮できるようになってきた」 日本体操協会が設けた第三者機関の調査結果は、12月上旬頃には公表される予定だ。どのような処分となるかは現段階では全く分からないが、宮田自身は既に前を向いて体操競技に打ち込む意志をはっきりと示しており、全日本団体選手権でこのように語っている。 「団体優勝したいという思いはみんなが持っていた。自分がこうしていたら優勝できたかもしれないなという思いはあったけど、来年はそこを埋めていけたらいい。点差を見たら来年優勝できるところには食らいついている。来年からまた構成を上げてチャレンジしていきたい」 自ら犯したあやまちを反省し、体操を辞めることも考えた日々を経て再び大会に戻ってきた宮田の思いや覚悟は、体操仲間にも届いている。 団体戦の平均台の演技後は、順大のメンバーはもちろん、同じ班で廻っていたパリ五輪代表の岸里奈(戸田市スポーツセンター)や豊島リサコーチにハイタッチで迎えられた。鯖江高校の後輩も拍手と笑顔を向けていた。
「できる限り長く体操をしたい」
団体戦の翌日にあった全日本種目別選手権は、足の状態を考慮して欠場することを決めた。だが、この決断も前向きな思いがベースにある。 「自分の中で、今後は足もより強くしていかなきゃいけないと思っているし、体の使い方によって治る部位だとも聞いている。大学生になって体の回復力も高校生の時よりは衰えていると思うし、うまく体を使っていかないと体操を続けていくにあたって大変だと思うので、そういうケアもしっかりしながら、できる限り長く体操をしたい」 自分自身に正面から向き合って出した答えは何よりも強い。ひとまわり成長した宮田の今後にエールを送りたい。
(「オリンピックPRESS」矢内由美子 = 文)
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