2025大阪・関西万博会場、開幕に向けて工事着々:海外&国内パビリオン、トイレの一部を披露
個性あふれる海外パビリオンも続々誕生
リングから会場を眺めると、ひときわ目を引いたのが外壁に横27メートル、縦10メートルの巨大ディスプレーを設置した韓国館。万博期間中は、K-POPのライブ映像や観光名所の動画などで自国文化をアピールすることを検討中という。 館内でも来場者の声をAI(人工知能)で分析し、オーケストラ音楽に変換して場内に流すなどデジタル技術を駆使。2040年の未来社会を体験してもらうことを目指している。
“いのちを救う”をテーマにしたセービングゾーンでは、在大阪オランダ総領事館のマーク・カウパース総領事が出迎えてくれた。 日本が鎖国していた江戸時代、唯一の交易国だっただけに「人工島・出島(長崎県)で培った日本とのコラボレーションが、この新しい人工島(夢洲)につながっている。まさにオランダパビリオンがテーマとする『コモングラウンド(共創の礎)』の精神を象徴しているのではないかと思う」と粋な紹介をした。オランダ館では太陽やクリーンエネルギーを象徴する球体を建物の中心に据え、最新の環境技術などを紹介する予定だ。
休憩所やトイレなど公共スペースでは若手建築家が活躍
70年大阪万博に携わった黒川紀章ら若手建築家は、日本を代表するクリエイターとなり、世界を舞台に活躍。今回の万博でも若い世代にチャンスを与えるため、40歳以下を条件にギャラリーや休憩所、トイレなど公共スペース20カ所の設計を公募した。 その一つ「トイレ2」は、こつ然とストーンサークルが出現したかのような斬新なデザイン。屋根を支えるのは、地元では「残念石」として知られる高さ2.5~3メートルの巨石である。大坂夏の陣(1615年)で焼失した大坂城を再建するため、石垣用の石が各地から集められたが、現地に到着できなかったものが河原などに放置されていたのだ。 「トイレ2」に使用したのは、京都府木津川流域に残されていたもので、約400年越しで大阪に到着したことになる。設計を担当した一人・小林広美さんは「この巨大な石を、当時の技術で切り出した人間の力を感じてほしい。そして過去と現在、未来への思いをつなげられる万博になればと思っている」と話す。
年が明ければ開催まで約100日。個性的なパビリオンが次々と完成し、最先端技術や世界中の文化が相互に作用しあうことで、万博に“いのち”が吹き込まれていくのは、生物学者の福岡教授が話す生命発生論に通じる。万博そのものが 一つの生命体として“いのちの輝き”を発信できれば、入場券販売不振の懸念など吹き飛ぶのかもしれない。 取材・文・撮影=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)