【法律相談】「隣家との土地の“境界線”を調査したいのに隣人が協力してくれない…」 境界確定のためにはどんな手続きが必要か?弁護士が解説
土地を巡るトラブルとして“隣家との境界線”が争点になることがある。正確な境界線を調査したいのに、隣人が協力してくれなかった場合は、どうすればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】 30年以上前のことですが、隣に住んでいた叔父が杭を抜き、うちの土地へ越境して家を建て直しました。 父も叔父もすでに亡くなっており、本当の境界線を知りたいのですが、隣人が立ち会いに応じてくれません。うちの土地を分筆(*「分筆」とは、登記簿上の1つの土地を複数の土地に分けて登記する手続きのこと)したいため、杭がないと困ります。隣人が立ち会ってくれない場合はどうしたらよいのでしょうか。(三重県・48才女性・パート) 【回答】 土地を分筆する際には、分筆後の土地の地積測量図の添付が必要です。さらに法務局では、分筆される土地の周囲の土地所有者が署名した境界確認書の提出を求められます。 そのため、分筆するときには多くの場合、周りの土地所有者の立ち会いで確認された境界を土地家屋調査士が実測して境界確定図を作り、さらにその確認署名を受けることになります。 境界確定に隣人が協力しない場合、裁判所での「境界確定の訴え」と法務局による「筆界特定手続」の2つの方法があります。 「境界確定の訴え」は、隣地所有者を被告にして裁判を提起し、裁判所の判決で境界を決めてもらいます。判決が確定すると誰もその効力を争うことができないため、いちばん確実な紛争解決方法ですが、裁判提起も、有利な判決をもらうための証拠収集は簡単ではありません。 「筆界特定手続」は、法務局の筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地の土地の筆界の位置を特定する制度です(「筆界」とは、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線のこと)。
筆界特定の申請をすると、申請人や隣地所有者などの関係者に手続きの開始が通知され、資料提出の協力を求められることもありますが、意見を述べる機会も付与されます。 そして、筆界調査委員の調査意見に基づいて、筆界特定登記官が、境界線を特定した筆界特定書を作成し、申請人に写しを渡し、筆界を特定したことを公告します。裁判に比べると、測量が必要な場合を除いて負担は軽く、迅速です。隣地所有者の協力がなくても筆界調査委員は立ち入り調査などが可能です。しかし不服があれば裁判で争えます。とはいえ、筆界特定は境界の事実上の特定です。筆界特定書は専門家の判断として尊重されますから、境界確定の裁判においても有力な証拠になるでしょう。 そこで、まずは筆界特定手続の利用をおすすめします。なお、境界が確定すれば、土地の所有者は、隣地所有者と共同の費用で、境界標を設けることができます。 【プロフィール】 竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。 ※女性セブン2024年10月24・31日号