【50代におすすめの本】芥川賞作家「最新作」じっくり読みたい
寒い冬に温かい部屋で読みたい書籍を厳選! 列をとおして人間の内面を深く掘り下げた作品『列』や、料理研究家・有元葉子の定番おせちを紹介する「我が家のおせち【決定版】」など3冊をピックアップ。 【写真】50代女性に読んでほしいおすすめ本
その列に、あなたは並ばずにいられるか
中村文則 講談社 ¥1,540 主人公をはじめ、大勢の人間が列に並んでいる。何の列か、見えない先頭や最後尾がどこにあるのか誰も知らないが、みんな自分より前の者をうらやみ、後の者を軽んじている。列から離れたが最後、すぐさま間隔を詰められ、もう二度と戻れない……。人間の内面を深く掘り下げた作品で海外でも評価の高い気鋭による怪作。人類史上、最も互いを比べ合っている時代のゆがみと生きづらさを、意味もわからずひたすら列に並ぶ人々の姿を通して浮き彫りに。その力業に圧倒される。
新年を寿(ことほ)ぐために、手作りしてみたくなる
有元葉子 東京書籍 ¥2,200 ズバぬけたセンスで定評のある料理研究家が、30年以上かけて極めた25品の定番おせちとは? タイムスケジュールに沿って、だしのとり方から盛りつけの極意まで、美しい写真をふんだんに交えて伝授。本書を参考に1、2品でも手作りすれば、2024年がいい年になりそう。
“哲学する”動物たちにクスッ、ズキッ、ホロリ
ドリアン助川 集英社インターナショナル ¥2,000 命の不確かさと確かさについて考えるリス。どちらの生活が過酷かを議論するウミイグアナとリクイグアナ。心の進化を問うアリクイ……。作家、詩人、歌手としてマルチに活躍する著者が、動物たちの生態に哲学のエッセンスをからめて描く21編は、ユーモラスでいて深遠だ。
撮影/田村伊吹 原文/細貝さやか ※エクラ2024年1月号掲載