大手は業績好調も「町焼き肉」を取り巻く厳しい状況…コスト高以外の原因とは?
焼き肉店の倒産が増えている。帝国データバンクによると、焼き肉店運営会社の倒産(負債1000万円以上)は2024年1~6月が20件で、前年同期比2.5倍に。過去最多だった19年の26件を上回る勢いだ。 石田純一は自身の「焼き肉店」で終電まで働いて…人気減で周囲から人が消えた現在地 インフレ、円安による原材料費や人件費、水道光熱費などのコスト高が原因に挙げられている。 「アメリカやオーストラリア産の輸入牛、特にタンなどの部位の価格が高止まりしていて、国産と遜色ない状態が続いています。他の飲食業態に比べて換気がしっかりしていて、オペレーションのしやすさなどから、一部の居酒屋店を焼き肉店に衣替えしたワタミのように、コロナ禍で新規開業が増えました。昨今は供給過多のため、淘汰が始まっています」(外食コンサルタント) 値上げが必至の状況だが、客足を心配して価格改定に踏み切れない店も少なくなく、前年度から減益を含む業績悪化の割合は64.6%と高水準。 だが、「焼肉きんぐ」で知られる物語コーポレーションなど一部大手チェーンは業績好調で、メニューや価格、販促の見直しのほか、受付や注文、配膳、決済で省力化が進んでいる影響も大きい。一方で、苦境に陥っているのが中小の焼き肉店だ。 ■迫る「消滅危機」 「個人経営の焼き肉店は超人気店でない限り、生き残りが厳しい状況です。今はインバウンド需要が旺盛ですが、高度成長期のように店を出せば成功する時代ではありません。人口減少で内需がシュリンクする中、将来に明るい展望が持てないことから後継ぎは現れず、自分の代で店を閉める決断をする経営者も多いといいます」(消費経済アナリスト・渡辺広明氏) 節約志向の高まりも大きい。 「今どきはA5ランクの和牛がスーパーでも比較的安く購入できます。店との違いは換気などの設備のほか、タレの味付けや肉の切り方ぐらいでしょう。よほどこだわりがなければ、焼き肉は家でも十分楽しめます」(渡辺広明氏) 庶民の“たまの贅沢”が内食化すれば、町焼き肉は消滅危機だ。